ヤンキー進化論 不良文化はなぜ強い
最近、盛り上がってきたヤンキーという文化集団の研究。これまで表で語られることが少なかった日本の地方の不良文化の系譜を明らかにする。特攻服の暴走族、リーゼントのツッパリ、ギャル、スケバン、レディース、DQNなどヤンキーと、曖昧にされてきた周辺の概念を定義していくのが面白い。
著者は、ヤンキー的であるとは、
・階層的には下(と見なされがち)
・旧来型の男女性役割(男の側は女性に対して、性的でありかつ家庭的であることを求める。概して早熟・早婚)
・ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を指向
というファクターを帯びていることだという仮説を提示する。
ヤンキー研究の意義を「階層的に下位に位置づけられることが、自身のアイデンティティを毀損しない生き方」をポジティブに語ることに見出している。上品・洗練・高尚な文化資本だけで社会は成り立っていない以上、「バッドテイストですが、何か?」という強さも時に必要とされるのではないかと書いている。
著者は、諸説あるなかヤンキーの源流はやはり米兵(Yankee)文化だろうと分析する。暴走族、ツッパリ、親衛隊、ヤンキー的なものは脈々と受け継がれてきた。その様子を可視化した50年代からの時代の変遷マップが掲載されている。
ヤンキーの系統を芸能人の世代を分類したデータもあった。少しずつ違うのである。言葉にはしにくいがイメージがしやすくなる。
第一世代 矢沢永吉、館ひろし、和田アキ子、岩城滉一、ブラザーコーン、横浜銀蝿、鈴木雅之、島田紳助、長渕剛
第二世代 石橋貴明、哀川翔、宇梶剛士、嶋大輔、ゲッツ板谷、長原成樹、杉本哲太、ヒロミ、XJAPAN、中森明菜、小泉今日子
第三世代 工藤静香、辰吉丈一郎、ZEEBRA、飯島愛、中居正広、品川祐、綾小路翔、千代大海龍二、鈴木紗理奈
反学校的、悪趣味というキーワードも出てくる。
ヤンキーは「反学校的」だが、完全な反社会ではないだなと気がつく。彼らが好んだ学生服(改造する)も特攻服も、考えてみれば体制側の与えた服装だ。ルールに逆らいたいが完全に破ってしまうわけではない。そして大人になると地域の社会に溶け込んでいき、祭りで主要な役割を担っていったりする。そして「悪趣味」。敢えてダサいファッションを取り入れる。
主にファッションの変遷の分析から、ヤンキーという文化集団の様相が見えてくる本だった。ヤンキー文化論序説とあわせて読むべき本である。しかし、この本も著者はヤンキーというわけではないので、視点の設定に苦労しているのがうかがえる。根がヤンキーだと社会学者にならないわけで、なかなか難しい研究領域なのだなあ。
・ヤンキー文化論序説
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-951.html
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