白蝶花
白蝶花(はくちょうばな)は、白い蝶のような花をたくさんつけるが、風に吹かれて、すぐに枝から落ちてしまう。しかし次の日にはまた新しい花を咲かせる植物。
大正から昭和の激動の時代に生きた5人の女達の命懸けの恋愛を描いた官能ロマン。デビュー作「花宵道中」でR-18文学賞大賞を受賞した宮木あや子の受賞後第一作。花宵では遊郭という世界にとらわれた哀しい女達の一途な恋愛模様だったが、本作でも、因習や制度に縛られた女達の連続ドラマという点では共通している。
組長の性の玩具にされていた妾が、組員とできたのがばれて折檻される話。女学校に通う娘が親の借金のために資産家に売られていく話。知事の家の女中として奉公に入った田舎娘が知事の娘にねちねちといじめられる話。女達は運命を受け容れて愛さぬ男に身体を差し出すが、心は密かに愛する男に一途に捧げる。心だけは自由に生きようと抗う。
やがて時代は少しずつ女性の解放へと向かっていくが今度は戦争が男達を奪い去っていく。「もう一度抱いて。ずっと忘れられないように。私の身体に刻んで。」。だから女達は心から愛する男とつかの間の激しい愛を交わす。
「花宵道中」の官能表現の過激さは本作でも満開。というか、最初はそれ目当てで読みはじめるわけだが、過激でありながら文学性を失わない文体にこの作家の凄さを再認識させられる。
映画にならないかな、これ。
・花宵道中
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-936.html
これがデビュー作。
作者は違うが宿業の女達の年代記という点では下記2つもおすすめ。
・べっぴんぢごく
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-843.html
・赤朽葉家の伝説
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005047.html
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