パノラマ島綺譚
「少女椿」で知られる丸尾末広が江戸川乱歩の作品を見事に漫画化。既にベテランだが第13回手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した。丸尾末広というとガロ系でエログロ・マニアックのイメージが強い。だが、この作品では、その持ち味をいかしつつ抑えるところは抑えて(性交や性器描写は美を損ねないように描かれる。)、より幅広い層にアピールする出来になっている。
中年の三文作家の男が、元同級生で自分と瓜二つの容貌を持つ大富豪が死んだことを知る。男は本人になりすまし大富豪として生き返る。そして莫大な資産を使い、夢のテーマパーク「パノラマ島」の建設に乗り出すというストーリー。おなじみの名探偵明智小五郎も登場する乱歩のシリーズ作の一つ。
暗く退廃的な前半部に対して後半のパノラマ島の描写が幻想的で美しい。とても丁寧に描かれている。フルカラーだったら額に入れて飾っておきたいような印象的なコマも多くある。
乱歩作品の魅力を引き出して見事に映像化している。江戸川乱歩の作品というのは得体の知れない怪しさが魅力だと思う。丸尾末広の描く大正ロマン調の絵柄は現代において時代錯誤でいかにも怪しい雰囲気を醸し出す。この取り合わせで幻惑がテーマのパノラマ島というのは相性がばっちりだったのだ。暗い部屋で一本の傑作幻灯映画を見たような気分になる。
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