ドキュメント長期刑務所
無期懲役が確定し20年以上服役中の著者がペンネームで書いた刑務所ドキュメンタリ。長期刑務所とは8年以上の重罪の受刑者のみが収容される全国に5カ所ある施設のこと。その知られざる実態が明かされる。軽犯罪や政治・経済犯が刑務所体験を書くケースは多いが、重罪で長期というのは珍しい本なのではないか。文章をみる限り、著者は相当のインテリなのだが、2件の殺人を犯しているらしい。
「塀の外の社会では、無期囚はおおよそ15年から20年で仮釈放と考えられていますが、とんでもない誤解です。現実は30年近くから35年かかっていますし、出られない(出ない?)人も相当数いるのです。2007年の無期受刑者の仮釈放者は全国1670名のうちたった3人で平均服役年数は31年10ヶ月でした。」
刑務所内でのややこしい人間関係や日々の心情が綴られている。受刑者達は、食べるものと仲間関係のプライド(面子)に極端に執着するようだ。(食べ物については「極道めし」という名作漫画がある。)。狭く閉じた社会の中で独特の人間模様が展開されている。
受刑者には暴力団組員も多い。
「今回は、自分が相手の命を奪ったけど、互いにこの世界にいたら、それは覚悟のうえですよね。明日はこっちかもしれない。互いに恨みっこなしです。冥福は祈りますが、それ以上はありません。そういう世界に自分はいるってことです。」
なんてことをさらっという囚人がいる。
一緒に感動的なテレビドラマを見ていて泣く囚人と泣かない囚人がいるという観察がある。組のために体を懸けた結果、殺人を犯した組員は泣き、強盗強姦殺人の囚人はまったく感情移入がないという。囚人には総じて「我を持って尊しをなす」ような人種が多いと著者は嘆き気味に書いている。
知らなくて良いことで満載の本だが、著者は結構文章が上手なので、人間観察記録としてかなり楽しめた。
・刑務所の前
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/post-859.html
・極道めし
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-852.html
・死刑のすべて―元刑務官が明かす
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/10/post-468.html
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