バスジャック
「となり町戦争」の三崎 亜記の書ける物語の幅広さがよくわかる短編集。7本収録。
「今、「バスジャック」がブームである。一昨年の秋から、じわじわとブーム再燃の兆しはあった。」。巷ではバスジャックが大ブームで、ジャックする方もされる方も、流儀に従ってよいバスジャックを追究しようとする妙な世界を描いた表題作「バスジャック」。
「ああ、ご主人さん?もう町内でお宅だけなんですけどねえ。そろそろつけてもらえないですかねえ。」。なんのためなのかわからないが、つけなければならなくなった二回扉の謎を描いた「二回扉をつけてください」。
コミュニケーションの超絶的な不全状態をコミカルに描いた「二人の記憶」。人間はわかりあえないけど、わかったことにするのがコミュニケーションってことか。私はこの作品が好きだな。
奇想が魅力の作家だが、忘れられない人との最期の日々を描いた「送りの夏」や、4ページで終わる独白超短編「しあわせな光」は実にしんみりと読ませる。こういうこともできるのかと感心させられる。いっぺんに通しで7編を読むとバリエーションの妙が楽しめる。一気に読もう。
三崎 亜記。筒井康隆と星新一と誰かを足して3で割ったような感じなのだが、誰かって誰だろう。それがわかりそうでわからないのがこの人の魅力なのだな。
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