俺、南進して。
荒木 経惟 +町田 康。1999年のコラボレーション作品。昨年に文庫化されて知ったが、これはサイズの大きな単行本の方で読むべき。町田の小説にアラーキーの写真で構成されている。半分写真集だから。
その創作経緯がユニーク。
「俺は過去の不始末のカタをつけるために南へ向かった...。大阪の街を彷徨う町田康を主演に荒木経惟が濃密な写真を撮り下ろし、その写真からインスパイアされた町田康がスリリングな小説を書き下ろした。イメージが膨らみ、物語が錯綜する。写真界、文学界の天才二人がディープにセッションした写真・小説の最高のコラボレーション。 」
おおざっぱな設定で写真を撮って、さらにその写真から、物語のディティールをふくらます。町田は内面のつぶやきを偏執的に綴っていくのが得意な(そればかりな)作家であるが、アラーキーのムードある(ヌードもある)写真と組み合わされることで、濃密な世界観が生み出されている。
写真から物語を創作するという方法は素人でも創発しやすそうだ。今ならFlickrみたいな写真共有サイト上で試されても面白いかもしれない。写真+テキストでインタラクティブなアドベンチャーゲームに仕上げることもできるだろう。
それにしても町田は結構な男前なのであった。いかにも物語を背負っていそうな雰囲気。なぜかアラーキー自身も一緒に写っていたりする(物語には出てこないのだが)。作者二人の遊び感覚も感じられるが、実験作品には終わらない小説部分の完成度の高さがある。この二人は写真→小説→写真のコラボを繰り返して映画でも撮ったら面白そうだ。
・東京人生SINCE1962
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/since1962.html
・宿屋めぐり
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-828.html
・告白
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/10/post-474.html
・フォトグラフール - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-745.html
・土間の四十八滝 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-733.html
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