富士山、自殺サークル
細く優しいタッチの絵柄で人間のカルマを描く漫画。
富士山の神様は木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)だ。この美しい女神は天皇の祖先であるニニギノミコトと結婚するのだが、婚約時にサクヤヒメの実家からは姉のイワナガヒメもセットで送られてきた。サクヤヒメの父、オオヤマツミは、見所のある若者ニニギノミコトに娘二人とも妻にせよ、というつもりだったのだ。
ところがイワナガヒメがあまりに醜かったのでニニギノミコトは実家へ送り返してしまった。するとオオヤマツミは「イワナガヒメを娶れば岩のように永遠の生命が約束されたのに。おまえはコノハナサクヤヒメだけを選んだ。おまえとその子孫の命は儚いものになるだろう。」と言った。それ以来、人間の寿命は短いものになってしまった、そうだ。
人身事故を経験した電車の運転手と飛び込みそうな女の「中央線」、青木ヶ原樹海で自殺しようとする女二人の「樹海」、35年前の飛行機の墜落事故をめぐる悲しい男女の「乱気流」など、救いようのない人間の業を描く短編が7編。背景や舞台に必ず霊峰富士山がでてくる。文学作品的な厚みと深みのある内容。
カルマつながりというか、この本と同時にこれも読んだ。
映画「自殺サークル」の漫画化だそうだが、原作者の意向で映画とはまったく違う話になっているそうだ。大勢の女子高生達がホームで手をつなぎ一列になって「いっせーのせっ」で電車に飛び込み自殺する衝撃シーンから始まる。たったひとり生き残った少女のまわりに次第に寂しい少女達が集まり始める。都市伝説ホラーの秀作。
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