粘膜人間
「「弟を殺そう」―身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐太は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか?そして待ち受ける凄絶な運命とは...。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。
」
おぞましい。グロテスク。不気味。残忍。悪趣味。しかし読み始めたら止まらない暗い魅力がある。
河童が主要登場キャラとしてでてくるが、この妖怪の描き方が昔話や伝説に出てくる河童とかなりずれている。ぐにゃりとした体つきで低知能で兇暴な性格。怒りだしたら何をするかわからない。想定外の要素に満ちた河童。正体がわかっている恐怖よりも、得体の知れないもの、異形のもののほうが底なしに恐ろしい。明らかに人間ではないのに話が通じる(しかし感情や常識は共有していない)ところがこの河童の不気味な怖さの理由なのかもしれない。
"髑髏"という薬物を使って精神を破壊していく究極の拷問のくだりも強烈に記憶に残った。この作家は人間の嫌悪感のツボというものを知り尽くしているなあと感心する。心身共に切り刻むような内容だ。そして物語は昭和のムラ社会の閉塞世界に、エログロでえげつない登場人物ばかりがでてくる。嫌だなあと生理的に感じながらも、冒頭から転がり落ちるようなテンポとエスカレートする状況に怖いものみたさの心が惹きつけられてしまう。
とにかくホラー好きは読むべきだ。傑作と思う。特に「姉飼」や「独白するユニバーサル横メルカトル」が好きな人におすすめ。
・姉飼
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/zoz.html
・独白するユニバーサル横メルカトル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/10/post-472.html
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