ダメなものは、タメになる テレビやゲームは頭を良くしている

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読書とテレビゲームではどちらが頭をつかうだろうか、タメになるだろうか?。

ずばりゲームであるという本である。

著者は過去30年間に映画や音楽、テレビやゲームなどのポピュラー文化の中身が複雑になり知的な要求度が高まったと分析し、その傾向を「スリーパー曲線」と名づけた。視聴者はテレビやゲームをするとき、平坦な読書体験よりも遙かに頭や五感をフルに働かせているという。

たとえば70年代のテレビ番組と現在のテレビ番組を比べると内容の複雑さや展開スピードの速さが段違いだ。マルチスレッド(複数のストーリーが並行して進む)、点滅矢印(わかりにくいヒント)、社会的ネットワーク(錯綜する人物相関図)といった点で最近の人気ドラマのスリーパー曲線を検証している。

ネットやゲームにはまると人間関係がおろそかになるというのも俗説に過ぎない。なぜならネットでもゲームでも実際に人気なのはコミュニティであり、ネットワーキングだからだ。

「でも実は、過去数年間でウェブで最ももてはやされてきた展開は、ほとんどすべてが社会的交流を増大させるツールだった:出会い系サイト、フレンドスターなどの社会的ネットワークサイトおよびビジネスネットアークサイト、2004年に選挙運動で政治組織の中核をなしたミートアップなどブロガー同士の会話増加を目的としたツールが多く作られた。」

私はゲームが大好きなのだが、特にロールプレイングゲームは私達の世代以降の日本人の人生観に大きな影響を与えていると思う。それはレベルと経験値によるドラクエ的人生観を植え付けたという意味で、だ。経験値を溜めていけば技能が着実に身について、いつか強い敵を倒すことができるという人生モデルを、スクエニは数百万人の若者の脳にインストールしてしまった。単純であるが結構まともな考え方だよなあと思う。

本書によると「ゲームをやる人のほうが、一貫して社会性が高く、自信があり、問題を独創的に解決することをためらわなかった」という研究結果もあるそうだ。ゲームも捨てたものではない。

ゲームが非行暴力を助長しているという一般論にもデータをあげて反論している。実際に数字の上では1992年から2002年の10年間でアメリカにおける暴力犯罪は半減している。そして学生のIQが全般的に向上している。教育的な背景を反映しない技能の向上(おもに流動知性)が目立つ。知能の中位から低位の範囲で向上が顕著である。あれれ、みんなゲームやネットの時代に、それにどっぷり浸かりながら、賢くなっているのである。

「ぼくの主張は、何が本当に認知的なジャンクフードで、何が本当にためになるものか、というのを見極める基準を変えるべきだということだ。番組の暴力や扇動性を心配したり、服装の乱れやfuckなどの言葉尻を心配するよりも、問題はその番組が頭を使わせるか、それとも考えさせないかということであるべきだ。」

ゲームやネットを悪者にする人たちに反撃する論拠が満載の痛快な本である。

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このページは、daiyaが2009年2月26日 23:59に書いたブログ記事です。

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