花宵道中
第5回R-18文学賞&大賞ダブル受賞。
それが何を意味するか?
新潮社のR-18文学賞というのは単なる官能系文学賞ではなくて「女による女のための R-18文学賞」である。応募者は女性作家に限定されているだけでなく、下読みレベルから審査員まで選考にかかわるスタッフすべて女性である。男の好みを入れずに、女が感じる官能小説の凄いのが大賞に選ばれる。大賞と別に読者賞があり、その投票も女性限定である。それで本作品は大賞と読者賞ダブル受賞している。女のエロティシズムの極みである。男が読んでもぐぐっときてしまう(ピュア)。
江戸の吉原を舞台にして遊女達の切なく悲しい生き様を描いている。彼女らの日常は性愛が中心となる。吉原という設定が際どい性描写を正当化する。状況設定によって単なるエロ話でなく文学作品として成立している。女優が脱ぐための芸術的理由があって脱いでいる感じ。そこらのアダルトビデオとは違うのである。だから多くの女性読者に支持されたのではないかと思う。
性交や性技に関する描写が満載だが、即物的に行われているコトがいやらしいだけでなくて、そのコトが行われている状況がエロ度を倍加させている。現代ではありえない人権無視の買われた女たちという設定を存分に活かしている。
仮に性描写がなくてもこの作品は極上の出来である。1976年生まれの新人作家と思えない完成度。オムニバス形式でひとつの遊郭に働く遊女達のそれぞれの視点で物語が語られていく。時間的にも重なる部分があり、そこで起きていることが読み進むにつれ立体的に見えてくる。見えれば見えるほど、遊郭人間模様の切なさが極まっていく。
とてもいやらしくて、とても切ない娯楽文学の傑作。あ、でも、おこさまは読んじゃダメですよ。
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