儲かるオフィス 社員が幸せに働ける「場」の創り方
知識ワーカーがクリエイティブに働くためのオフィス論。多摩大学大学院教授(知識経営論)の紺野登先生の本。
「クリエイティブなオフィスというとフリーアドレスを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、すでに指摘したように実は創造業務には向いていません。創造業務に必要なのは「対話」の質や密度、その背景となる組織の知の質であって、自由に座ることではないからです。ちなみにフリーアドレス制が向いているのは、営業部門のように在籍率が低い組織です。」
「組織図をそのままオフィスレイアウトに反映させてしまうと、創造的な環境は生まれません。したがって、無思想なファシリティ・マネジメントは、「儲からないオフィス」のきっかけになりかねないのです。」
私はフリーアドレスも組織図レイアウトも経験があるが、結局レイアウト云々というより、隣に座る人が誰かによって生産性、創造性が一番大きく影響を受けるように思う。そして真横に並ぶのではなくて、斜めに向き合うのがちょうどよいと思う。真横の同僚には話し掛けにくいからだ。こちらが声をかけようとするのを、向こうも瞬時に察知して向き合う位置関係が私は好きである。対話が多くなる気がするのだ。この本も、コミュニケーションが増えるオフィスの作り方を大企業の事例を中心に紹介している。
「つまり「場」の創出とは、各部門が組織横断的に協調したり、自社外の人々をも巻き込んでプロジェクト業務を行ったりできるよう、組織内外の人的・知的ネットワークが企業の価値創造プロセスに直結するソーシャル・キャピタル(社会観系資本)を生み出すことを意味します。」
信頼関係や人間関係の豊かさが知の移転や共有、アイデアやイノベーションを生み出し「儲かる」につながっていく。だからちょっとした打ち合わせ、リラックスしたコミュニケーションができる空間を作ることが大切という話だ。
儲かるオフィスづくりのポイントとして次の7項目が詳説される。
1 トップが積極的に関与する
2 本社を「事業創造のための場」と位置づける
3 階段とエスカレーターをコミュニケーションツールにする
4 集う場、発信する場をあえてつくる
5 インサイド・アウトによるデザイン・アプローチをとる
6 環境への配慮は前提となる
7 本社は社会・都市機能を担う
で、結論は
・「有機的な」空間の構成─従来のように機械的でなく、組織図にとらわれない人間的ネットワークを重視する
・切れ目のないレイアウト─身体的、感情的なつながりを重視し、組織文化、協調的リーダーシップの生まれる場となる
・環境への配慮─自然を巧みに取り入れ、組織、職場が社会の動きに応える
ということなのだが、働き方の多様化、人材の流動化、コンピュータネットワークの進化によって、知のワークプレイスも変化に臨機応変に対応する柔軟性が求められている。新しいオフィスのあるべき姿を考えている人に特におすすめの本である。
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ところで、著者の紺野先生と私は昨年、多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を設立しました。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。
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