自己信頼[新訳]
アメリカの思想家、詩人 ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803~82)。18歳でハーバード大学を卒業し、教師、牧師を経て、ニューハンプシャー州コンコードに定住し、独自の思想の著述と講演を展開した。成功哲学、自己啓発の祖みたいな人である。
この本は「自己信頼」と題された短い論文だが名言の連続で構成されている。感動的な演説を聴いたかのような読後感が残る100ページの小冊子である。1ページ当たりの文字数はとても少ないのですらすら読める。読みやすい訳文が光る。
「自分の考えを信じること、自分にとっての真実は、すべての人にとっての真実だと信じること───それが天才である。」
「自分を信じよ。あなたが奏でる力強い調べは、万人の心をふるわせるはずだ。」
「一個の人間でありたいなら、社会に迎合してはならない。不滅の栄誉を得たいなら、善という名目に惑わされることなく、それが本当に善かどうかを探究する必要がある。」
「私にとって、自分の本性に係わる法則以外に神聖な法則はない。善や悪はたんなる呼び名にすぎず、簡単に他の言葉と置き換えられる。正しいものは私の性質に即したものだけであり、悪い物は私の性質に反したものだけである。」
「自分自身にこだわるのだ。ゆめゆめ模倣などしてはならない。」
エマソンは自分の信じた道を行けばそれが絶対正しいと繰り返す。一貫性がなくてもそのとき考えたことを断固として語れ、それで他人に誤解されても気にするな。「偉大であることは誤解されることなのだ」と説く。徹底した自己信頼は「もし私が悪魔の子なら、悪魔に従って生きていくまでです」という断固っぷりである。
自身を失いそうなとき、迷いのあるとき、心の栄養補給ドリンクとなる本だ。逆に躁状態で読むと効き過ぎて困ったことになるかもしれない。エマソンの言葉は強烈に薬にも毒にもなる。本物なのである。
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