現代を読み解く ラブホテル人間学―欲望マーケティングの実態
・現代を読み解く ラブホテル人間学―欲望マーケティングの実態
アベックホテル、ファッションホテル、ブティックホテル、カップルズホテル、レジャーホテル。つまりラブホテルの話。著者は昭和40年代から実に40年以上にわたり1638ものホテルをデザインしてきたラブホテルデザインの第一人者だそうだ。
幼稚園で子どもが好んで座るおまるをデザインしたところからキャリアが始まったというが、「セックスするときは、みんな子どもに戻る」を持論に、回転ベッドや鏡張りの非日常的な空間を次々にプロデュースしていった。その斬新奇抜で話題性のあるデザインはマスコミが連日取り上げて時代の寵児となった。
「余談ですが、私はラブホテルのデザインをするにあたって、利用者の声をあまり取り入れませんでした。というのも、お客さんの好みといっても、セックスはとても個人的なもの。表には出にくいものだからです。取り入れようにも、アンケートをとったって、誰も本心をいうわけはありませんから、意味がないのです。」
ラブホテルは世界的に例がない日本だけの文化だ。著者は「日本人は器で食事をする。外国人はカロリーで食事をする」が持論。淫靡さ、猥雑さ、ドキドキ感を伴うスケベな雰囲気にこだわって、想像力をかき立てる部屋、五感を刺激する空間を演出して一時代を築いた。最近のラブホテルはシティホテルのように清潔で上品になり、活力を失ってしまったと嘆く。
「昭和50年代のラブホテルは一日につき、一部屋四~五回転は当たり前、中には八回転という化け物的な部屋もありました。売上も、一月当たり一部屋100万円が当然で、多くなると180万円というものもありました。しかし、現在、一部屋が稼ぎ出す金額は、平均40万円くらいでといわれています。」
不動産投資コンサルタントの分析によるとラブホテル市場は売上規模で3~4兆円。デジタルコンテンツ市場と同規模なのだという。繁華街型、郊外型、インターチェンジ型などのモデル別経営事情が明かされている。5%程度が平均の不動産投資商品の中で、ラブホテル投資は20%近いリターンがあるケースも多いそうで投資物件として格別の魅力があるという。新市場AIMに上場したラブホテルファンドもあるらしい。
なかなか見ることができないラブホの裏側をじっくり観察できる新書。個性的な著者の話が面白い。欲望マーケティングの実態、よくわかった。
・愛の空間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/oso.html
・性の用語集
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004793.html
・みんな、気持ちよかった!―人類10万年のセックス史
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005182.html
・ヒトはなぜするのか WHY WE DO IT : Rethinking Sex and the Selfish Gene
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003360.html
・夜這いの民俗学・性愛編
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002358.html
・性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004747.html
・武士道とエロス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004599.html
・男女交際進化論「情交」か「肉交」か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004393.html
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 現代を読み解く ラブホテル人間学―欲望マーケティングの実態
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2399