金閣寺
「写真や教科書で、現実の金閣をたびたび見ながら、私の心の中では、父の語った金閣の幻のほうが勝を制した。父は決して現実の金閣が、金色にかがやいているなどとは語らなかった筈だが、父によれば金閣ほど美しいものは地上になく、又金閣というその字面、その音韻から、私の心が描きだした金閣は、途方もないものであった。」
昨年の夏に新幹線で三島由紀夫の「金閣寺」を読みながら京都に本物の金閣寺を見にいった。修学旅行以来だったが金閣寺は相変わらず金色に輝いていた。外国人観光客と一緒に写真をパチパチと写してきた。デジタルな被写体としてはなかなか面白いのだが歴史の重みを感じられない。タクシーの運転手さんに「金閣は新しいもので趣がありませんなあ」と言われてしまうくらい地元では人気がないらしい。
1394年に創建された金閣寺は1950年に21歳の僧侶による放火で全焼している。今のピカピカ金閣は1955年に再建されたもの。金閣の美に魅入られ寺に入門した主人公が、なぜ『金閣を焼かねばならぬ』という決意に至ったのか。犯人自殺により真相は不明となった事件だが、三島はそれを狂人の仕業とは片付けず、魂の遍歴の帰結として告白の文体で作品化した。
主人公は放火したあと、金閣を出て左大文字山の頂きへ駈けて逃げるのだが、実際に現地に行ってみると、山までの距離感が分かって臨場感が感じられた。
以前、中国で孔子の故郷を訪ねながら「孔子」を読んでみたことがあったが、この旅行しながら読書というスタイルは、訪問地も作品も強く印象に残るのでおすすめの読書スタイル。
・孔子
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/11/post-168.html
以下、金閣寺を撮影してきた写真。
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