巨人譚
私が一番好きな漫画家 諸星大二郎の新刊。
巨人がキーワードになる神話や伝承をベースにした過去作品に、新たに書き下ろしたギルガメシュ叙事詩をテーマとした作品を加えた作品集。初出は1979年から2008年の30年に渡り「西遊妖猿伝、海神記と並ぶもう一つの野心的なライフワーク」と帯にうたわれているのだが、巨人が登場しない作品や中国伝奇モノまで含まれており、ひとつのシリーズとしては寄せ集め感が漂う。
だがでっちあげシリーズとはいえ、神話伝承を得意とする作家なので、個々の作品はもちろん面白い。スケールが壮大。タッシリナジェールの壁画「白い巨人」が描かれた一本の短剣が共通して登場する。短剣はギルガメシュやテーセウス、オデュセウスら各文明の英雄達の手によってメソポタミアからクレタへ、リビア、サハラ砂漠へと人類の歴史の黎明期を漂っていく。
やはりプリミティブな世界を描くと諸星大二郎の持ち味がいきるなあと思う。諸星作品の中でも、妖怪ハンターシリーズ、暗黒神話・孔子暗黒伝、マッドメン、海神記など古代神話系が好きな私としては、栞と紙魚子のようなコメディ路線だけでは欲求不満だったが、2007年頃から連続して過去作品の新装復刊、西遊妖猿伝の再開など諸星大二郎ブームの再燃がみえてきているのが嬉しい。
ときどき実現されるドラマ化、映画化作品の中には、沢田研二主演、塚本晋也監督「ヒルコ 妖怪ハンター」のようなトンデモ作品もあるが、私は2005年公開「奇談」が好きだ。これは原作の雰囲気をかなり忠実に再現しているように思う。だが、原作にこだわったが故に一般には余り人気がでなかったようだ。カルトをメジャー化させるのは本当に難しい。
・私の好きな漫画家たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2003/12/post-46.html
・未来歳時記・バイオの黙示録
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-830.html
・栞と紙魚子の百物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/post-791.html
・トゥルーデおばさん眠れぬ夜の奇妙な話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/04/post-377.html
・「私家版魚類図譜」「私家版鳥類図譜」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/post-554.html
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