なおみ
6歳の女の子と日本人形の「なおみ」が古い洋館で過ごした少女時代の記憶。谷川俊太郎のひらがなの詩と、幻灯のように暗くざらざらした質感の沢渡朔の写真が、トラウマになりそうな強烈な印象を残す。
1982年出版の伝説的な絵本の復刻。ある種のダークファンタジー。大人向け。おしゃれなカフェの本棚に置いておくのに向いていそう。
「 なおみは いる
わたしの うまれる
ずっと まえから
なおみは いた
わたしのそばに 」
人形は変わらない。けれど少女は成長していく。人形と心が通うのは、ほんの短い間のこと。その出会いと別れのつかの間を見事に映像化した。思い出の中で凍結された時間のギャラリー。
なおみの無表情で真っ白な顔とまっすぐに凝視するまなざしが怖い。少女とだけ心が通じて会話をしているように見える。少女の生に照射されて人形は魂を帯びたように映る。死んでいるのか、生きているのかわからないのが怖いのだ。人形(にんぎょう)というよりも人形(ひとがた)というほうがふさわしい。
この日本人形はこの絵本のために特別に制作されたらしい。出版後何十年が経過し、この少女は外国人男性と結婚して、やはり娘が生まれたとのこと。絵本の内容にそうした人生を予言したような部分があって不思議な感じがする。
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