予想どおりに不合理
面白い。
人間は伝統的な経済学の理論ほど合理的な決断をしていない。だがその不合理な行動は十分に系統だって予想可能なものである。それが「予想どおりに不合理」というタイトルの意味である。消費者行動を操る心理学。
値の張るアントレをメニューに載せると、それを注文する人がいなくても、レストラン全体の収入が増える。5000円と3000円のコースが2つだけしかなければ安い3000円が売れるが、8000円のコースを加えると5000円を選ぶ人が増えるからである。メニューの作り方だけで消費者行動を操る実例がいくつも示されている。
たとえば25ドルのペンを買うときには7ドル安い店が近くにあれば移動してそちらで買う。しかし2000ドルのスーツを買うときには1993ドルの店が近くにあっても、今いる店で買うだろう。大きな買い物をするときは端数部分の金額の大きさが気にならなくなってしまう。
社会規範と市場規範という話も興味深い。弁護士の集団に1時間あたり30ドルで困窮している退職者の相談に乗る仕事をお願いするとほとんどの弁護士に断られた。しかし無報酬ならば話に乗る弁護士が多数現れたという。彼らの通常の報酬はかなり高いので市場規範で見れば30ドルでは安すぎる。だが、困っている人を助けるという社会規範で訴えかけられれば、タダでも動くのだ。
価格が支払った金額が高い薬ほどよく効くという実験も人間の身体に経済心理学が組み込まれていることの証で興味深い話だ。これからは風邪薬や目薬を買うときは一番高いのを買うことにしよう。
他にも、無料は単なる値引き以上の効果があること、性的興奮時は選択オプションに大胆になる、所有意識(所有者の売り手は買い手よりも高く評価してしまう)も価値であること、現金の代わりにもの(引き換え券など)を報酬にした実験は不正が多くなることなど、セールスや経営を考える人に参考になる話題が満載。
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