「信用偏差値」―あなたを格付けする
大変面白かったです。
今年後半でよく使うようになった電子マネーのnanaco。自宅と会社近所のセブンイレブンでほぼ毎日使う。いま確認してみたらポイントが(利用料金の約1%与えられる)が900円を超えている。いつのまにか10万円近く使っていることに気がついた。これにSUICA、家電量販店等のポイントを加えると年間に数十万円も、私はいわゆる電子マネーを利用しているのだった。
この本によるとクレジットカードショッピング取扱高は毎年10%程度の割合で伸びている。2006年時点での総額が34兆円。発行枚数は2.9億枚で国民一人当たり二枚以上は持っている。これに対して電子マネーは2007年度に8444億円、2008年度に1兆3783億円、2012年には3兆2695億円に拡大すると見込まれている。クレジットカードと比較すると規模はまだ小さいがクレジットカードは月2.5件、電子マネーは月10件で4倍も使われている。日常生活に密着する点では電子マネーが強い。ここ数年、日銀券発行が減少に向かっている理由が電子マネーの普及でもあるらしい。メジャーだけでも10種類ある電子マネーの特徴や普及の状況、マイルのバブル崩壊の解説なども詳しい。
クレジットカードと電子マネーが融合していく傾向もあるのだが、統合が進むと、あらゆる決済が信用情報機関に集積されていくと怖ろしい面もある。日本でも米国と同様にこれまで別々だった銀行や保険やノンバンク、クレジットなどの信用情報を統合する方向に金融業界は動いている。この本の主題はその個人の信用格付け(クレジットスコア)が日本経済や社会にどのような影響を与えるかの未来予想である。
米国の個人のクレジットスコア評価基準というのが公開されている。
1 返済履歴(35%)
2 与信総額に対する利用総額の比率(30%)
3 クレジット履歴(期間)の長さ(15%)
4 ローン利用の実態(10%)
5 新しいクレジットカードを作ったか(新しい取引を始めたか)(10%)
年収や勤続年数、持ち家を高く評価する日本とかなりこの評価基準は異なる。
「日本では、五百万円借りている人と一千万円借りている人を比べると一千万円借りている人の方がリスクが高いとみなされ、警戒される。ところが、米国では一千万円、二千万円借り入れていても、その人が返済しているのなら、信用があると、前向きに判断される。返済ができているのは、それだけ収入があるからだと、考えているためだ。」
米国では、このスコアが住宅ローンや車のローン、転職などの人生のあらゆる局面で照会される。そして支払うべき金利や受けられるサービスが決定されてしまう。スコアが高い人はよいサービスを安く受けられるが、米国ではスコアの悪い人は良い人に比べて生涯で3000万円も多く支払わなければならないという。
「米国では、クレジットスコアを導入したことで、結果的に、サブプライムローンを発生させ、世界強行突入の元凶となった。さらに、この偏差値が一人歩きを始めており、金利だけでなく就職から転居、携帯電話加入まで、ことごとく格差を拡大する方向に働いている。富裕な人は金融から就職まで高いクレジットスコアの裏打ちがあって、プラスに働いてくれるが、信用力の低いサブプライムな人たちは、家を失ったり、就職試験に落ちたり、様々な不便を被っているのだ。」
信用情報機関は日本では銀行など金融業者のために設立されたが、米国では名簿業者から始まったため、マーケティングへの反映に制限が少なかったようだ。そして日本でも、万人に対する一定の金利の時代から、個人のスコアに応じた金利の時代への以降が今まさに始まっているという。
じゃあ、そういう時代にどうすれば賢いのか?という疑問へのアドバイスが明示されていて参考になった。ライフスタイルに応じた持つべきクレジットカード2種類のリコメンドや、スコアを高めるために注意するポイントなども詳しい。
電子マネーとクレジットカードに現状について裏も表もよくわかる良い本だと思う。非常に知識が増えた、勉強になった。
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