2007年度 年間オススメ書籍ランキング ノンフィクション部門
これ2008年ではなくて2007年のランキングです。
このブログでは年末年始に年間のおすすめ書籍をまとめているわけですが、昨年は書籍「フィクション編」は公開したのに、「ノンフィクション編」を公開しなかったことに気がつきました。いまは2008年版を作成中なのですが、その前に2007年度に読んだ本で面白くておすすめのリスト公開し忘れてしまいました版を公開しておきます。
なお、このリストは私がその年に読んだというだけで、その年に出版された本ではありません。かなり昔の古典も含まれています。
【過去の年間ベスト おすすめ書籍】
・2004年度 年間オススメ書籍ベスト20 この本が良かった。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/12/20.html
・2005年度 年間オススメ書籍ランキング ベスト20冊
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/200520-1.html
・2006年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション編
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/2006-3.html
・2006年度 年間オススメ書籍ランキング ノンフィクション編
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/2006-4.html
・2007年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/2007-5.html
■1位 あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/12/post-683.html
■2位 黄泉の犬
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/02/post-532.html
藤原新也の世界は劇画的だなと思う。世界を描く線の数が多いのだ。あらゆることを意味や価値に結びつけて、自分の哲学の完成を追及している。いちいち深いのだ。反発を感じつつも、魅了される。
■3位 ヨーロッパをさすらう異形の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-665.html
・ヨーロッパをさすらう異形の物語 上―中世の幻想・神話・伝説
「中世ヨーロッパの伝説が解説つきで24編が収録されている。一部が童話として変形して伝わった以外は、日本ではあまり知られていない話が多いように思う。海外の人が、桃太郎や金太郎、一寸法師や海幸山幸のような昔話をよく知らないのと一緒だろう。知っていれば、異文化の文学や創作を深く味わうことにつながる。」
■4位 ナショナル・ストーリー・プロジェクト
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/03/post-537.html
ポール・オースターがラジオ番組から、全米のリスナーに対して、あなたが語るべき人生の物語を投稿してほしいと呼びかけた。あらゆる年齢、性別、職業、人種の人々から、何千編もの実話の投稿が集まった。どの話も、語り手にとって人生の中で人に語りたいことが数ページに濃縮されている。オースターはその中から珠玉の180編を選び出して番組で放送した。そしてこの本ができた。
■5位 「いき」の構造 他二篇
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-606.html
・「いき」の構造 他二篇
真剣で一途な恋は「いき」ではない。恋の束縛から自由な浮気心は「いき」である。追いかけすぎてもいけない。もっといえば「運命によって諦めを得た「媚態」が「意気地」の自由に生きるのが「いき」である」。
「要するに「いき」とは、わが国の文化を特色附けている道徳的理想主義と宗教的非現実性との形相因によって、質料因たる媚態が自己の存在意義を完成したものであるということができる。」
この本の特徴は「いき」をトポロジーで説明したことだ。表紙にあるこの図は見ていて飽きない。さらに詳しい解説を読みこむと、漠然としていた言葉の意味がすっきりと整理される。
■6位 千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/03/post-539.html
・千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン
100年以上続く店舗や企業はお隣韓国には1社もなく、中国やその他のアジア諸国にもほとんどない。ヨーロッパでさえ老舗の数は日本に及ばず、最古の企業の歴史は600年程度である。日本の老舗企業の多さは世界で飛びぬけた現象であると書かれている。
■7位 経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/06/post-591.html
この本の面白さは「ヤバい経済学」に似ている。経済学だが、需要と供給の話はほとんどでてこなくて、インセンティブや人々の生活思考を研究の対象にしている。新書だが単行本なみに内容が詰まっている。
■8位 たった2分で人の心をつかむ話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/cd-1.html
■9位 メメント・モリ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/03/post-542.html
・メメント・モリ
この写真集を見て心を揺さぶられない人はいるのだろうか?
20年前に出版された、藤原新也の伝説的な傑作。
メメント・モリ=死を想え。
■10位 視界良好―先天性全盲の私が生活している世界
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-616.html
先天性全盲である著者が、聴覚、触覚、嗅覚をフル稼働させて、どのように世界を認識しているかを書いた本。この表現が適切かどうかわからないのだが、"目から鱗が落ちる"記述の連続である。そして面白い。
■11位 教育力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/i-1.html
冒頭で「教育の根底にあるのはあこがれの伝染である」と著者は結論をいう。いきなり納得して、続きを読みたくなった。
■12位 考えることの科学―推論の認知心理学への招待
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/06/post-583.html
人間の日常的な推論は、認知的な制約や感情的な要因が入っていて合理的といえない結論をしてしまうことがありがちだ。著者は多くの実例を出しながら、人間の認知の欠陥を指摘していく。簡単な論理式や図を使って、わかりやすく且つ厳密に説明してくれるので、読みやすくて勉強になる。とても面白かった。
■13位 陰影礼賛
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/06/aae.html
谷崎は抽象論にいかず、ディティールにこだわる。蝋燭の明かりに映し出された味噌汁って色がうまそうだろう、日本女性の身体のつくる陰って白人女性にはない隠微さがあるだろう、漆器や金蒔絵なんかも暗いところの方がきれいに見えるものだ、とか書いている。明るくて清潔で騒々しい部屋の生活に慣れた現代人が忘れかけている闇の中の美をずばり言い当てているのが凄い。
■14位 妄想に取り憑かれる人々
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-607.html
最もふさわしくない場面で、最もふさわしくない「おぞましい想念」を考えてしまう精神状態に関する、強迫性障害の世界的権威の書いた一般向けの心理学の本。
■15位 ステータス症候群―社会格差という病
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-661.html
・ステータス症候群―社会格差という病
世界中で社会格差と人々の健康には明らかな相関があることがデータで示されている。貧しい階層よりもお金持ちの階層のほうが病気をせずに長生きする。両極の中間層では階層があがるにつれて確実に健康状態がよくなっていく勾配が見られる。さらに学歴や社会的地位や身長で人々を比べてもほぼ同様の結果になる。高いほど健康なのだ。これがステータス症候群である。
■16位 図説 金枝篇
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-563.html
少し値が張る本だが、長大な民族学の古典「金枝篇」を見事に要約し、原典にはなかった写真やイラストで本文の理解を深める工夫が素晴らしい。装丁もよく、本として完成度が極めて高い内容。フレーザーを読むならこれがおすすめ。
■17位 超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/06/post-595.html
・超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会
遺伝子操作による身体能力や精神の改造、インプラント(体内埋め込み)による心身の能力拡張、脳とコンピュータの融合によるテレパシー通信の実現など禁断のテクノロジー領域に迫る。テクノロジーが人類という種を超人類に進化させる可能性を、最新の先端科学の成果で検証し、未来への展望を探る。
■18位 今日の芸術―時代を創造するものは誰か
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-612.html
岡本太郎の考えでは表現行為とは人間の本質であるから、誰もが思う通りに絵を描いたり音楽を作ったりすればいいのだ、下手も上手もなくて、ユニークかどうかが大事なのだということである。上手な芸術家をまねて美しく、ここちよい表現をするのは芸術ではないのである。日本の芸術家も教育も間違っていて、けしからんのである。
■19位 生物と無生物のあいだ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-598.html
・生物と無生物のあいだ
人は生物と無生物を簡単に見分けられるが、何が生命なのかと定義を問われると、明確には答えることが難しい。この世紀の難問に対して、分子生物学者の著者は、生命とは「動的な平衡状態」であり、「かたちの相補性」を原動力にするものだ、と明解で美しい答えを出す。
■20位 グノーシスと古代宇宙論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/post-557.html
・グノーシスと古代宇宙論
グノーシスの宇宙観では、神は二人いる。至高神と造物主である。至高神は宇宙を開闢したあと造物主を生み、目に見える物質界の創造はそれにまかせた。造物主はこの世界や生物をつくり、惑星を司る7人の支配者にその世界を委ねた。これにより神の叡知界→星辰界→地上世界という創造と被造、支配と被支配のヒエラルキーが確立される。
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