正直書評。
2004年から2008年までの日本文学・海外文学を中心とした書評集。
この秋に最高に楽しかったイベントはデジハリ大学の学園祭だ。「本のプロが語る、クリエイターのための読書術セミナー」というパネルディスカッションに出演した。そこで『文学賞メッタ斬り!』などで有名な書評家 豊﨑由美さんに、とうとうお会いできたことが感激であった。
・豊崎さんのBlog : 書評王の島
http://d.hatena.ne.jp/bookreviewking/
豊崎さんの歯に衣着せぬメッタ斬り書評を、私はずっと小説を読む際の参考にしてきた。だが、豊崎さんの書評本について書評を書くなどという危険な行為は避けていた。今回びびりながら書くわけだが(先方もブログをやっていらっしゃる...ゾゾゾ)、実物は想像通り、キレのある発言連発のかっこいい人であった。
当日、控室で対面するまではワクワクと同時にガクガクブルブルしていたのである。もともと私は強い女性に弱いので...、いやいや、今回はそういう性格的なことではなくて、トヨザキ社長の名前で私が強烈に連想するのが「ガター&スタンプ」だからである。トヨザキ社長が連載コラムの中で堕落した書評を表す言葉として使った言葉だ。
「ガター&スタンプ」はヴァージニア・ウルフの批評文にでてくる。「書評家は要約を抜き取り(ガター)、可の場合は*、不可の場合は別の印を押す(スタンプ)程度の仕事でもしてりゃあいいんじゃないの」という意味である。
そう。書評家の仕事というのは「要約+評価」という最低レベルからどれだけ上を目指すかという勝負なのだ。私のブログの記事は「ガター&スタンプ」に堕ちているものが多いと自覚している。書評を味わって読んでもらうというよりは、良い本との出会いを演出するナビゲーターとして、機能的に働きたいという思いもあって、ほどほどにしているんだという言い訳も、そこにはあるのだれども。
ブログを書くたびにトヨサキ社長の脳内アバターに「ほら、オマエ、またガター&スタンプを量産するな」と責め立てられている気分なのだ。
本書「正直書評。」の評価基準は3つ。
金の斧 親を質に入れても買って読め!
銀の斧 図書館で借りられたら読めばー?
鉄の斧 ブックオフで100円で売っていても読むべからず?!
面白い本はベタ褒め、つまらぬ本はメッタ斬りという、いつもの姿勢は本書でも変わらない。巻末袋とじ部では6ページも使ってあの有名な大物作家を殺気満々にぶったぎっている。レベルの低い作品を容赦なく吊るしあげるが、毒舌の背後には、伸びてほしい作家への愛が感じられるのがトヨザキ節。だから読んでいて楽しい。
この本の評価を定量的に見てみると、意外な事実もわかった。この本には100冊の紹介があるのだが実は「鉄」は15冊くらいにすぎない。「銀」もほとんどない。圧倒的に「金」が多いのである。メディアでの印象に反してトヨザキ社長は辛口の批評家ではなくて、実は大甘な批評家だったのである。
ちなみに私とトヨザキ社長の小説作品の好みは類似度70%くらいだと思う。見識は3倍くらいあちらのほうが上である。よって、このブログの読者の皆さんにおすすめである。とりあえず、これから読む本が「金」かどうか(そもそもリストアップされているかどうか)確認してから読むと失敗が減らせるはずと思う。
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