ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層
・ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層
日米事情に詳しいエコノミストの経済比較、文化比較。
アニメ一作品の売上高を比較するとディズニーやハリウッドの予算は大きい。大きいが故にコンテンツとしての弱点ができる。「ビッグビジネスは大きな興行収入を目標に掲げなくてはならないので、市場の最大公約数的な需要・好みを対象にして製作される。」。わかりやすいがエッジが立ったものが出てこない。
「ところが日本のアニメや漫画には、「ラーメン屋的供給構造」が根強く残っている。最大公約数の需要(好み)よりも、製作者が自分らのセンスにこだわって、多種多様なものを創出、供給している。従って、ひとつずつのビジネスの規模(売上)は小さいが、多様でユニークなものが供給される。その結果、意外性や驚きのあるものが多く、面白い。」
漢字や仏教、民主主義など異文化を巧妙に内側に取り込んできた雑多性のダイナミズムが日本のアニメの創造力につながっているのではないかと分析されている。人種のるつぼでありながら何かと収斂傾向のあるアメリカとは対照的である。
「私のリーダーシップを受け入れるならば、難局は打開できる」と希望を語る大統領と「日本はこのままではダメになる」と危機を語る総理大臣という対比も面白い。実際に総理大臣の国会での発言を言語分析すると危機や難局などのネガティブなキーワードが多いそうである。危機を煽って国民を動かす。
日本人は論理的なディベートよりも情緒の共有を重視する。不祥事の際の対応として経営者の「慟哭の謝罪」とかが好きな国民なのだと著者は嘆き口調。著者自身の米国経済人たちとの積極的なディベート武勇伝をいくつか披露する。ブログでは日本人は世界一のカキコミ数を誇る。「俺にも言わせろ」衝動は日本人にも十分にあるのだから解き放てとすすめる。
「日本人よ、万羽のミニハゲタカとなって瀕死の巨象を啄もう!」が笑えた。「金融・投資の「専門家」達が投げている今こそ、ミニハゲタカ気分で大幅下落した米国のREITや大手金融株の物色を考えてみようではないか。」という前向きな日本人への提案。そのとおりかもしれない。
さまざまなデータで日本と米国のイメージを検証していく。日本の格差拡大はウソとか、個人の投資行動が慎重というのもウソとか、俗説を覆すデータが提示されていて、それぞれ説得力がある。
かつて米国が日本の経済や経営を成功例としてお手本にした時代があった。立場は時代によって入れ替わる。経済力の高い国のやり方がなんでも正しいとは限らない。著者の強気の日米比較論を読むと、もはや米国に見習うのではなく、どう互角にやりあうかを考える時代への突入のような気がしてきた。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2284