文章をダメにする三つの条件

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・文章をダメにする三つの条件
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文章術の類書は多いが、こうすると文章がダメになるという作文の「べからず」という視点で書かれているのが本書の特徴だ。著者は元読売新聞社のデスクで、大学や文化センターで作文を教えるベテラン。豊富な授業経験から学生たちが陥りがちな悪い傾向を3つみつけたという。

1 文章の意図がつかめない事実や印象の羅列
2 読み手が退屈する理屈攻め
3 読み手の興味をひかない一般論

私も学生時代は作文はあまり得意ではなかった。今思えば、授業という文脈では、書く動機が弱すぎるのだ。提出した作文にはそもそも書く意図などなかった。だから、原稿用紙を埋めるために理屈と一般論を展開していた。

こうした傾向を避けるためのコツとして、書くポイントをひとつに絞ること、書き手の特異な個人的体験に逃げ込むこと、細部の観察にこだわること、など多くのポイントが、学生の作文例を肴にして明解に語られている。

著者の特異体験である新聞記者時代の経験談がやはり光っている。

「記者時代に先輩からこういわれたことがある。「取材が完全にできたときは、できるだけ易しく書け、どこか腑に落ちない取材のまま書かなければいけないときは、理屈っぽく難しく書いておけ」と。理屈は不完全な取材をごま化す一つの手法であり、逃げの一手でもあるのだ。」

材料が十分でなくても書かなければいけないという事態は、新聞記者でも学生でも一緒といえる。そんなときは高度な名文のコツよりも、まずはダメにしないコツの方が、多くの作文シーンで役立つものであると思う。

特異な体験をベースにせよという指摘はやっかいであるが肝である。

「よく"お役所仕事"という言葉が悪いイメージで使われる。これは"前例がないのでできません""人が一般的にやらないことなので、できません"といった消極的な態度を指していうのだが、作文では"前例のないこと""一般的でないこと"を掘り下げて書いてこそ、読むに耐えるものとなるのだ。」

著者の生徒には、自身の堕胎体験を綴った人がいたということだが、人生経験の棚卸しと同時に、内面をさらけだす勇気やノリが大切ということだろう。だからよく書かれた文章には自然と人柄がにじみ出てしまうのだ。

後半で、著者は、自分にはできないがと前置きした後、実は主語が明確に出ていない文章こそ、日本語の非論理性を自然に表した文章であると述べている。ただしそれは文章の巧みな人にのみ許される高度な技である、とも。

私もこのブログで、なるべく文頭が「私」にならないように書こうと日々気をつけていたりするのだが、かなり難しい。主語を隠すと文章の骨格がぐずぐずに崩れてしまうのだ。こればかりは天賦の才能か、相当の練習努力が必要なのだろうな。このブログは1900日を超えたがまだまだ私の文章修行は続く。

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このページは、daiyaが2008年10月27日 23:59に書いたブログ記事です。

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