文章は接続詞で決まる
「「てか」を好んで使う人は、すぐに新しい話題に移りたがる飽きっぽい人かもしれませんし、「ようするに」が口癖の人は、結論を急ぎたがるせっかちな人なのかもしれません。「でも」をよく使う人は、他人の言うことを素直に受けいれるのが苦手な頑固な人である可能性があります。「だから」を使いたがる人は、自分の主張を人に押しつけたがる押しの強い人かもしれませんし、「だって」を好む人は、言い訳が癖になっている、自己防衛本能が強い人かもしれません。」
接続詞の使い方を見ると隠れた性格がわかるという話。特に講義のような独話では接続詞は書き言葉の2,3倍も多く使われるそうだ。シーン別によく使われる接続詞ベスト5の比較が面白かった。文章のらしさは接続詞が決めている部分も多そうだ。
新聞:しかし、また、だが、一方、さらに
小説:しかし、そして、それで、だが、でも
講義:で、それから、そして、つまり、だから
著者は、対話では接続詞の多用はリスクが高いと注意する。相手の発話権を奪う、言い方を訂正して気分を逆なでする、逆接の使用で無用な対立を生む、自己正当化を目立たせる、という危険性に気をつけて使うべきだと説いている。(私は気をつけていないと「要するに」「つまり」「絶対に」を多用してしまう癖があるなあと自覚した。この注意は耳が痛い)。
普段は意識することがなかった文章や会話の中の接続詞について、深く考える機会を与えてくれる良書である。そもそも接続詞って何?から、「しかし」「だから」「たとえば」「あるいは」「ところが」「さらに」「また」「まず」「したがって」など多数の接続詞のひとつひとつを用例から説明する。「しかし」や「だから」の説明なんて初めて読んだが新鮮である。
接続詞の一般的な定義は「接続詞とは、文頭にあって、直前の文と、接続詞を含む文を論理的につなぐ表現である」というほどのものだが、本書では「接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現である」と再定義している。接続詞は必ずしも論理的ではないということでもある。
接続詞の読み手のための機能として次の6つを挙げる。
・連接関係を表示する機能
・文脈のつながりをなめらかにする機能
・重要な情報に焦点を絞る機能
・読み手に含意を読みとらせる機能
・接続の範囲を指定する機能
・文章の構造を整理する機能
そして接続詞を論理の接続詞、整理の接続詞、理解の接続詞、展開の接続詞、の4種をさらに10類にグループ化して、それぞれに豊富な用例と効能書きが続く。こんなにあるのかというのが素直な感想。著者曰くこれだけ接続詞だけを語った本は類例がないそうだ。接続詞のすべてがここにあるといってもよいかもしれない。というわけで、つまり、だから、それで、とりあえず、まずは........これだけ読んでおけば、もう一生接続詞で困ることはない、でしょうね。
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