双生児

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・双生児
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複雑、緻密な構成にうならされること間違いなしの大傑作。私などは読み終わって1時間くらい紙に物語の構造を図式化しながら考え込んでしまった。それがまた最高に楽しい時間だった。英国SF協会賞とアーサー・C・クラーク賞を受賞。

1999年、英国のノンフィクション作家スチュアート・グラットンは、第二次世界大戦中の記録に登場する空軍大尉J・L・ソウヤーなる人物のことが気になっていた。チャーチル首相の回顧録にその名前はあった。ソウヤーは良心的兵役拒否者であると同時に空軍爆撃機操縦士でもあったという。そんな矛盾したことはあり得ないはずである。ソウヤーの娘と名乗る女性があらわれグラットンに父の書いた古い原稿を託していく。

タイトルから推測できるように、案の定、ソウヤーの正体はジャックとジョーという双生児であった。この二人の人生が複数の記録や証言によって少しずつ明らかになるのだが、そのプロセスは一筋縄ではいかない。伏線の縄が十本、百本ある感じでそれらが錯綜している。メビウスの輪のように不思議な結び目が幾つもあらわれる。

この作品は物語りというより物騙りである。読者は少しずつずれた同時期の物語を何度も聞かされる。矛盾する語り。それは記録が虚実入り乱れているからなのか、平行世界が幾つも存在しているからなのか。根本的な疑問を抱えたまま現在と過去を何度も往復するうちに、緻密に設計された物語の重層的な迷宮構造が少しずつ姿を現していく。

とてつもないものを読まされたというのが素直な感想。

この読書体験はアゴタ・クリストフの「悪童日記」三部作に似ている気がした。このシリーズの騙り感覚が好きな人に特におすすめである。

・「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/02/post-529.html

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このページは、daiyaが2008年10月15日 23:59に書いたブログ記事です。

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