快適睡眠のすすめ
国民の50%が起床する時刻を調査したところ、60年代には曜日にかかわらず朝は6時起床、夜は10時に就寝していたそうだ。ところが、この35年間で起床も就床も30分から1時間遅くなり国民全体で夜型が進行しているという。
同時に睡眠時間は60年代に8時間13分だったのが1時間以上短縮された。国際比較によると日本人は1日当たりの平均睡眠時間が453分(7.6時間)で、世界でも目立った短眠民族である。(特に家事や育児に忙しい40代の日本女性が睡眠時間を切り詰めて世界一級とのこと。)
・平均睡眠時間
日本 453分
カナダ 489分
アメリカ 496分
イギリス 511分
オランダ 492分
デンマーク473分
フィンランド496分
個人レベルでみると朝型・夜型、短眠型・長眠型には一長一短の特徴があるそうだ。朝型人間は生活習慣の堅さが強く融通性がなく、夜型は生活パターンの変化に耐性を持つ。長眠型は内向的で非社交的、神経質な傾向が強く、短眠型は外向的で活動性に富み、こまかいことに無頓着な傾向がある。
実は短眠型の睡眠は効率がよく、深い徐波睡眠もレム睡眠も、長眠型と同量にとっているそうだ。長時間寝ることが健康によいとは限らないのである。眠るために横になった時間と正味の睡眠時間の割合を睡眠効率という。この数字は20代まではほぼ100%だが、年齢が上がるにつれて減っていき60代以降では70~80%まで下降してしまう。眠りの質も大きな問題だ。
夜にわずかにしか眠らず、1日中短い睡眠を繰り返す「多相性睡眠」という睡眠傾向の人もいる。エジソンやナポレオンがそうであったと言われる。1日の睡眠を4時間ごとに15分とって1日の睡眠時間が合計90分でも人によっては大丈夫らしい。実践者の話が紹介されていた。競技中のヨットレースの乗組員たちは多相性睡眠が一般的だともいう。1日中夢うつつな意識で過ごすのだろうか。
睡眠中の脳と身体のはたらきが詳細に解説されており勉強になる。睡眠中にも意識は目覚めている「見張り番メカニズム」は興味深い事実だ。レム睡眠では刺激の意味によって反応の正確さが変わる。たとえば雷が鳴っても起きない母親が、子供の泣き声ですぐに目覚める。睡眠中でも特定の音が聞こえたらボタンを押すという反応も可能のようだ。
身体には時計も内蔵されている。人間はあらかじめ何時に起きようと決めて眠ると時刻ぴったりに起きることができるものなのだという。これは私もよく体験していたから納得した。重要な予定のある日は目覚まし設定時刻の数分前に起きて、鳴る前に止めることが多い。体内で時刻がカウントされているのだ。不思議なことである。
この本は睡眠の研究者が、眠りの科学とそれに基づく睡眠の質改善のためのアドバイスが解説する内容。健康とのからみだけでなく、生産性と睡眠という観点からも興味深い事実が満載。たとえば眠気を測る技術として眠気スケールというものが紹介されている。
・スタンフォード眠気スケール
1 やる気がある、活発、頭がすっきりしている、はっきり目ざめている
2 よく目ざめているが最良の状態ではない、物事に集中することができる
3 ゆったりくつろいでいる、まあまあ目ざめており、物事に集中できる
4 やや頭がボーっとして気がぬけている、横になりたい気分
5 頭がボーっとしていて気が散りやすい、目ざめているのがむずかしい
6 眠い、横になりたい、頭がぼんやりしている
7 まどろんでいる、起きていられない、すぐに眠ってしまいそうだ
この自覚的評価法でもある程度は再現性のある測定ができるものらしい。これは個人差もあるが一般的には「眠気のていどは二時間リズム、十二時間リズム、二十四時間リズムと強くなり、眠気のピークは早朝の四から六時がもっとも強く、つぎに午後の二~四時が眠い。」。交通事故や重大ミスの発生時間はこのパターン通りに発生する。
眠気、居眠りによるミスを防ぐには、早い午後にコーヒー、緑茶、紅茶、チョコレートを摂取して、20分ほど仮眠するとよいと教えている。20分なら本格的な睡眠に入らずに起きることができ、カフェインの効き目は30分後にあらわれるから目ざめやすいそうだ。今度やってみよう。
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