お笑いで支店長になりまして―年間約二百回の講演をこなすユーモアコンサルタントがおくるビジネス対人術
・お笑いで支店長になりまして―年間約二百回の講演をこなすユーモアコンサルタントがおくるビジネス対人術
お堅い雰囲気の信用金庫勤務時代に「お笑い研究会」を旗揚げし、地域への貢献が認められて支店長にまでなった「ユーモアコンサルタント」のお話。ビジネスにおける笑いの効用を研究した著者は「人を笑わせることは、特にビジネストークにおいては、性格の問題ではなく、技術の問題なのです。」と結論している。
「技術」といっても決して高度なものではない。その気になれば、誰にでもできそうな笑いへの取り組みや考え方を紹介している。たとえば「ユーモアトーク」の例は、
「この問題のラベルは、大変高いのです」(レベル...)
「私は、この分野ではエキスパンダーといわれています。」(エキスパート...)
「昔からよくいわれています、備えあれば・・・備えあれば嬉しいな」
という感じで、字面だけ見たらばただのオヤジギャグである。だが、表紙の写真の著者がニコニコしながらこれを喋れば、場が楽しい雰囲気になるだろうなというのは、容易に想像できる。
私の尊敬する先輩社長と似ているなあと思った。その社長は会社の中でしばしばベタなオヤジギャグを言っている。本人もそんなことを言えばベタでオヤジくさく見えることを意識している。でも、チームを和ませたいという意図が伝わってくるので、みんな半分お愛想で笑う。でも、そうやって笑っているうちに、場は本当に和んでいる。すごくいい社長だと思う。
ビジネスの現場では、お笑い芸人のような洗練されたショウが求められているわけではない。場を良い雰囲気にしたいと思って話していることが周りに伝わることが大切なのだろうと思う。
「ビジネスにおいては、人に優しい笑いを心掛けていただきたいのです。お客様を愉快にさせてあげたいとか部下や同僚を楽しませてあげたいとの気持ちで笑いを発信してください。」
「協調の笑い」「笑いの誘因作用」「リセットの笑い」「シーソー理論」「太鼓持ち理論」など笑いの効用がまとめられている。特に「シーソー理論」がよかった。誰かを貶めて笑うのではなく、自分を笑いのネタにせよというアドバイスだ。
「失敗談も自分の失敗談を面白おかしく話せばよいのです。お客様とあなたがシーソーをしているところをイメージしてください。あなたが下がっているときは、お客様は勝手に上がっていますね。あの感じです。」
落とすときには自分を下げて、相手を持ち上げる笑い話をしなさいと勧めている。これって、うまくやるには自分に相当の自信がないとできないものだと思う。自虐的に見えたりしたら失敗だ。やはりユーモアとは余裕の証なのである。
講演記録風の読みやすい本で、すらすらっと読めて楽しかった。ユーモア論というと、欧米人のユーモアを引き合いに出す本が多かったように思うが、日本人の社会には馴染まない部分もある。この本はその点、関西お笑い風だ。わかりやすい。日本人の普通のビジネスマンが笑いをどうビジネスに活用するか、実践的な方法論の本である。
・笑って元気
http://blog.livedoor.jp/yano5151/
著者のブログ。
・もっと笑うためのユーモア学入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000892.html
・「人志松本のすべらない話」と「必笑小咄のテクニック」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/08/post-425.html
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