太陽系はここまでわかった
太陽系についての一般向け科学読み物。太陽、水星、金星、地球と月、小惑星、木星、土星、天王星と海王星、冥王星とカイパーベルトについて一章ずつをあてて研究史と最新の知識がまとめられている。子供の頃、学研「宇宙のひみつ」に夢中になったが、これは大人向けの宇宙の秘密本。
・宇宙のひみつ(旧版)
http://arch-type.net/Himitsu/review/rev001od.html
私が読んだ旧版についての紹介ページ。現在は中身はまるごと改訂されている。
ここ30年の衛星による探査の成功によって、私の子供時代とは比べものにならないほど、太陽系の惑星や衛星については解明が進んでいた。そして宇宙を研究する新しい意義がみつかった。
たとえば太陽の黒点について興味深いデータが紹介されている。
「1861年から1989年までの気象観測所におけるデータから、黒点数と地球の北半球の年間平均気温との間に極めて高い関連性があることが分かっている。奇妙なことに、黒点サイクルの長さ(現在の測定値は平均10.8年だが、9.5年と11年のあいだで突発的に変動する)と年間平均気温のあいだにはさらに密接な関連性がある。サイクルが短いときは気温が低く、長いときには気温が高いのである。」
そして過去1万年間を通じて、70年前から今日までの期間が黒点活動が異常に強い時期であることも発見されている。つまり、地球温暖化は人類の活動によるCO2増加が原因などではなくて、ただ地球の気候変動がたまたまそういう時期だったからに過ぎない可能性がある。
もうひとつ重大な問題だと思ったのは地球に接近する小惑星の研究である。大きな小惑星が衝突すれば人類絶滅の危機になる。これ以上の大問題はないというくらい大きな問題だが、観察ネットワークの整備や研究は始まったばかり。衝突が不可避となったときの危機回避の手段が挙げられている。
・核爆弾で爆破する
・電磁誘導装置で軌道から押し出す
・アルミ箔でくるみ太陽風で軌道を変える
・小惑星の片側を黒く塗って熱エネルギーの効果で軌道を変える
どれもまるでSFのように思えるが、もしも高速に接近する小惑星が発見されたら、人類はこんな離れ業も実現しなくてはいけないわけである。できなければ滅びてしまう。
宇宙研究の予算は縮小傾向にあるが、こんなふうに宇宙を研究することで、地球温暖化の真の原因がわかったり、小惑星の衝突を回避することができるとしたら、いくらお金をつぎ込んだってよいではないか、と思った。
探査船や望遠鏡の技術の進歩によって天体の姿が明らかになってきている。本書の冒頭にもたくさんのカラー写真があったが、ここ数年で素晴らしい宇宙関連のビジュアル書籍も生まれている。以下の3つは秀逸だった。
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