ストーカー
ソ連SFの巨匠ストルガツキー兄弟が原作小説を書きタルコフスキーが映画化した「ストーカー」。大江健三郎が著書の中で何度も言及していたので知り、ずっとその映画が気になっているのだがDVDが品切れで、なかなか見ることができない。数年が経過。
もう先に原作を読んでしまうか、と思って手に取った。
あるとき異星人の「来訪」があった。彼らは人類にまったく接触することなく、痕跡「ゾーン」のみを残して地球を去っていった。「ストーカー」とは危険な「ゾーン」に不法侵入して、異星人たちが残した正体不明の物体の数々を持ち出してくるアウトローな職業の呼び名だ。
彼らがゾーンから運び出す「空き缶」「魔女のジェリー」「うごめく磁石」「黒い飛沫」などと通称される謎の物体は、地球の物質とは異なる性質を持ち、希少価値として闇市場で高く取引される。ゾーンの奥深くには人々の願望を叶える「願望機」があるという噂だ。ゾーンはあらゆる死の危険に満ちた空間だがストーカーたちは高い報酬を求めて侵入を繰り返す。
ロシア語の原題は「路傍のピクニック」。人類に比較して圧倒的に高度な知的生命体は、地球にピクニックにきたけれども、彼らにとって人類の存在は地球にたかっている虫レベルの意味しかなかった。人類がゾーンで漁っているモノは、人類へのメッセージなどではなくて、彼らの行楽で残したゴミの山に過ぎない、という皮肉なテーマなのである。ストーカーは命がけでゴミを漁っていることになる。
設定がハードSFである上にアウトローの主人公の生き様がハードボイルドに描かれるので全体的に超硬派な印象だ。人間の生き様、人生観を描いているのはロシア文学の伝統っぽくもある。文学作品として上質なSF作品。
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