秋の牢獄
恒川光太郎の「夜市」「雷の季節の終わりに」につぐ期待の3作目。
3本の短編を収録。
「秋の牢獄」
「これは十一月七日の水曜日の物語だ」。目が覚めると昨日はなかったことになって、再び同じ秋の1日を繰り返してしまう不思議世界の物語。
「神家没落」
日本の各地に神出鬼没する因縁の家に閉じこめられた男が異世界からの脱出方法を探るが...。
「幻は夜に成長する」
念じた相手に思い通りの幻覚を見せる霊狐の力を受け継いでしまった少女の物語。
異界モノでは既存の神話や伝承をベースにする作家が多い中で、恒川光太郎はかなり独創的な異世界モノを追求している。この3本はどれも異次元や超能力がテーマだ。神話や伝承の豊穣なイメージに敢えて頼らず、海外のハードSF作品に通じるような普遍性の物語の方へ向かう作家のように思える。案外、グレッグ・イーガンなどの影響を受けているのだったりして。
大作家になる予感を感じて注目している恒川光太郎、3冊目も期待通りハイレベルな内容だったが、次は小説家としての記念碑的な、決定的な長編を出してほしい。
第一作「夜市」収録の名作「風の古道」は漫画になったようだ。夜市』は円谷エンタテインメントで映画化が決定しているらしい。
・夜市
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004796.html
・雷の季節の終わりに
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/11/post-489.html
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