科学する麻雀
もし私が麻雀現役だった学生時代にこの本を読んでいたら、こういう紹介文章なんて絶対に書かないで、知識を独り占めにしていたと思う。この本を読む前と後では、麻雀の強さが数パーセントは確実にアップしたんじゃないかと感じている。必勝法が書いてあるわけではないのだが、科学的に正しい情報を得て配牌に迷いがなくなるから、確実に余裕が生まれる。
著者はインターネット麻雀対局「東風荘」の実戦データを大量に収集して解析している。数万件、数十万件ものデータをベースに、戦略・戦術の発生確率や勝率を厳密に計算して、長年雀荘で語られてきた根拠のない俗説を次々に論破していく。
まず確率的には、ほとんどのケースで「先制リーチせよ」「手変わりを待つな」が正解になることが明かされる。よほど高い手が狙える稀な場合を除いて、安くても、どんどんリーチで攻めるべきなのだ。
「和了の大部分は、純粋に数学的な理由によって、テンパイ後の短い期間に固まるのだ。リーチすると得点はダマの場合と比較して2倍以上になるので(中略)ダマで和了できる形に、それも高い可能性でそうなってしまう形に取る場合、リーチしないことによる和了時の得点損失を埋め合わせることはひどく困難なのである。」
解析された数字が挙げられている個所を見るとゾクゾクする。
「統計的には持ち持ちの確率は10%程度である」
「ドラ待ち先制カンチャン・シャンポンリーチは実測によると、40%程度の確率で和了できる。また無スジ456のドラ単騎待ちリーチだと20%程度となる。」
「通常、リーチの半分以上はリーチ後6順程度以内に和了する。安全牌候補と呼ぶべき牌が3枚程度もあれば、まずまず上手に降りきることが可能なのである」
麻雀は手牌全体の変化を考えると3順先を考えるだけで1億通りもあるため、牌効率を読み切ることが人間にはもちろんコンピュータにとっても現実的ではない。そこで、実際にはパターンを読むことになるわけだが、どう読むかが後半で詳説されていて読み応えたっぷり。これをもとに麻雀ゲーム用の人工知能を開発できそうな知識が開示されている。
科学的分析が導く結論は、決して必勝法ではないのだが(そもそも麻雀は偶然の確立要素の強いゲームであることも最初に分析される)、科学的にまたは統計的にこれだけは言えるという戦略や戦術を多数教えてくれる。
読んでいたら、うずうずして、久しぶりに打ちたくなってきた。思えば3年くらい前に、雑誌ネットランナー(現ネトラン)の編集部企画で、メイド雀荘での大会に参加したのが最後になっている。真剣勝負はもうずいぶんやっていないわけだが。それでも本書は面白かった。
なお、麻雀用語は説明なしでばりばり使われるし、ゲームとして何が肝なのかを実戦である程度把握していないと、読めないレベルの内容である。理系雀士中級者以上におすすめ。麻雀現役であれば一読の特に価値ありである。
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