カラオケ化する世界
こんなに凄いことになっていたのか、KARAOKEって。ロンドン大学の歴史科研究員が現代の世界各国のカラオケフィーバーぶりを、情熱的にフィールドワークしてまとめた比較文化論。日本ではすこし冷めた感じがあるカラオケだが、その熱狂は世界に確実に波及していた。
「歌に対する人類の夢を具現化した機械・カラオケは、その誕生から三十年を経ずして全世界に普及した。世の様々な文化流行を見ても、これほどの短期間に、これほど広範囲の普及を見たものは他に類を見ない」
韓国では「国技」と呼ばれるくらい国民の娯楽として浸透している。ビジネスコミュニケーションに必須の潤滑剤にもなっているらしい。タイやインドネシアではセックスを提供する「アダルトカラオケ」も繁盛している。シンガポールや台北、上海にはカラオケタクシーまで登場した。
アメリカではカントリーと融合して「カラオケカウボーイ」いるし、イギリスではパブ文化と融合してストレス発散の場として人気がある。ユニークな発達を遂げてしまった例もあって、スコットランドでは無音のポルノ映画にみんなで勝手に喘ぎ声や効果音をつける「ポルナオケ」だとか、ニューヨークのアングラ「全裸カラオケ」はびっくりだ。
英語教育にカラオケを取り入れた国も多い。五感身体をフルに使うから学習効果はありそうだ。仏教カラオケ「悟りの旅」「俗世の旅」「解脱」、キリスト教の「教会カラオケ」など宗教でもカラオケは積極的に使われている。
写真もたくさん使って各国カラオケ事情が語られている。発見再発見の連続だった。「カラオケは日本に発祥するものであるが、既に完全にグローバルなものとなっている。各国は今や既存の文化の中にカラオケを取り込んでいる。」と著者は結論している。
日本人はもっとカラオケの生みの親であることを誇りにしてよさそうだ。カラオケの発明は1970年代。日本人の井上大佑氏が発明者と言われている。特許をとっていれば毎年百億円以上の収入が見込めたという。特許がなかったから広まったのかもしれないが。
1960年代に音楽で世界を変えようとしたボブ・ディランより、本当に世界を大きく変えてしまった井上氏の方が音楽の世界において、すごいひとなのではないかと思った。ちゃんと歴史に残すべきである。
最終章ではインターネットや最新テクノロジーと融合したカラオケ革命がレポートされている。インターネットやケータイと連動するサービスが紹介されている。今後の展開として個人的に注目しているのはWiiカラオケだ。商用配信レベルの内容がWiiで可能になるとするとカラオケブーム再燃もあったりして。
・Wiiがカラオケに 「JOYSOUND Wii」来春登場
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/10/news068.html
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