2008年5月アーカイブ

・テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代
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「8時だヨ!全員集合」、「欽ちゃんのどこまでやるの!」、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「太陽にほえろ!」「熱中時代」「スター誕生」「夜のヒットスタジオ」。1970年生まれの私は、まさに70年代テレビを見ながら物ごころがついた。子供だったからテレビを批判的にみることはしなかった。家族と一緒に見るテレビ視聴は、ただただ楽しい体験だった。

まず面白さの原点をテレビに学んでいた気がする。そして画面に映る社会や未来はいずれ自分がその中に入って行く世界の予告編に思えた。今思えばテレビは子供の私に最大の影響を与えた学校だった。だから、70年代テレビを客観的に解体しようとするこの本は、自分の思考や感性を批判的に見直す機会にもなった。

「本書は、何よりもこの「情報」と「演出」の亀裂を埋めるようなテレビ的言説の構築を目指すものである。そのために本書では、「自作自演」を分析のキーワードとして捉えることにしたい。私たちがテレビを「面白い」と思うときには、そこに必ず「自作自演」性が存在するのではないか。」

ここでいう自作自演性には、いわゆる「やらせ」番組も含まれるが、本質的にはもっと宿命的で、メタレベルの自作自演性である。たとえば一般人や関係者にカメラを向けたとき、そこにありのままの自然はない。

「そのときテレビカメラはただ客観的に目の前の出来事を伝えるだけでなく、自分たちがいま取材していること自体から生じた現場の空気をも伝えていることになる。つまりテレビが自らつくり出した雰囲気を、他人事のように客観性を装って(=演じて)伝えているという意味で、そこには「自作自演」性が存在するのである。」

「テレビの外部」を透明に映していたそれまでのテレビが、この自作自演のうまみに気がつき変容していく。「誰かの意図や戦略には回収されない、不透明な出来事としての「自作自演」性が、70年代テレビにはあったのではないか」という問題設定のもと、7人のメディア研究者が、さまざまな切り口で70年代テレビを徹底分析する。バラエティ番組、歌謡番組、ドキュメンタリ番組、ドラマ番組、コマーシャル、テレビと大晦日、女子アナ、やらせ問題の8つの章から構成される。

「テレビと大晦日」の章は、大晦日のテレビ番組表の変遷を、新聞のラテ欄の複写を見ながら分析するもので、個人的にはたいへんおもしろかった。国民的王道となったレコ大→紅白ラインを打倒しようと、毎年あの手この手で大作戦を仕掛ける民放各社の戦略に時代性がはっきり表れている。私も毎年、どれを見ようかと迷ったが、結局レコ大→紅白だったのだ。

70年代とは、国民の半数が毎週決まった時間にテレビの前に座った最後の時代だった。それが自作自演だったにせよ、みんなが同じ文化を共有できた最後の時代だったともいえる。今の子供はチャンネル争いなどしていないだろう。ゲームもあるし、インターネットもあるし、携帯もある。テレビはもはや選択肢の一つだ。ロングテールなメディアに育った世代は何を共有していくのだろうか、とこの本を読み終わって考える。

・Send2page.com
http://www.send2page.com
send2pagescr01.jpgのサムネール画像

Send2page.comは携帯メール経由で、Webの任意の場所を書き換えるための無料サービスである。携帯から日記を書きたいだけであれば、普通に携帯対応ブログを使えばよい。Send2Pageが役立つのは、既存のページの一部を書き換えたいとき、である。

たとえば、外出先からリアルタイムにイベント参加者予定者リストを書き換えたい、だとか、携帯対応していないWebページの一部に緊急でメッセージを表示させたいとき、などに役立つ。

Send2pageを使うにはまず無料のアカウントをつくる。すると アカウント名@send2page.com という専用のメールアドレスがもらえる。そして、同時に提示される貼り付け用HTMLコードを、メール経由で差し込む情報を表示させたいページの部分に挿入する。

そして携帯(ではなくてもよいのだが)から専用アドレスにメールをすると、本文部分がWebに挿入される。(完全に検証していないが、一部の環境では文字コードがUTF-8のWebページであれば日本語が使える。)。初期設定では、2通目を送ると最初の内容は消えてしまって新しい内容に置き換わる。

設定画面のEmailOptionで、最大5通まで過去のメールを表示させることもできる。FromアドレスやSubject、投稿時刻をページに一緒に表示させることも可能だ。複数のアドレスから投稿が可能なので、複数人数でページを更新することができる。

初期設定では誰でも投稿できてしまうため、スパムメールを受けてもページを更新してしまう。投稿アドレスやサブジェクト形式などあらかじめ登録したものしか受け付けないように設定することもできる。

・世界のスピリチュアル・スポット
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写真主体の全編カラー250ページ超の大判ビジュアルブック。この値段でこのクォリティを実現したランダムハウス講談社は素晴らしいと思う。倍の価格くらいの価値はあると感じた。ビジュアルに息をのみ、魅了される体験がしたい人におすすめ。夜中にひとりで空想の世界に飛ぶのに最適。

「「世界のスピリチュアル・スポット」では、地球上で最も力があり、畏怖の念を呼びさます地を選び、壮大な写真とともに世界をめぐる巡礼の旅へと案内する。ここで取り上げている場所は、そのいずれもが平安と力をたずさえた場所であり、祈りと儀式のための場所だ。こうした土地は私たちに、神なるものや未知のものについて語りかけてくる。そして、人と世界とのかかわりという大いなる謎の中で、私たちに喜びを与えてくれる。」

なお、「スピリチュアル」というタイトルになっているが、トンデモ系スピリチュアル要素はまったくない。解説文は百科事典風に撮影地の歴史や文化を客観的に説明しており、写真も抒情感を排したナショナルジ・オグラフィック風だ。「アラスカのランゲル=セント・エライアスの凍てつく景観からギザの灼熱の砂漠まで、そしてヨルダンの岩山の裂け目からペルーの山岳の寺院に至るまで」聖地と呼ばれる場所を巡礼する。敢えて精神性が演出されなくても、それぞれのスポットが放つオーラだけで十分なのである。

・地球のすばらしい樹木たち―巨樹・奇樹・神木
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/03/post-535.html
ビジュアルブックとしての完成度はこの本に匹敵する。

ところでこの本に取り上げられたのは世界の超A級スピリチュアル・スポットばかりだ。遠い外国や秘境ばかり。実際にはそう簡単に行けない場所が多い。そこで、私は最近、神奈川県の近所にB級スピリチュアル・スポットを発見したので、ここに紹介したい。

・田谷の洞窟(正式名称は瑜伽洞、写真をクリックでWikipediaへ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%91%9C%E4%BC%BD%E6%B4%9E
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東海道線 大船駅から徒歩の「田谷の洞窟」だ。大きな洞窟が近所にあるということは子供時代から聞いていたのだが、先日はじめて実際に訪問できた。「田谷の洞窟」で検索すると、体験者の多くが「B級だが感動した」という趣旨の感想を書いている。私も同じ所感である。

・幽玄の巨大地下迷宮「田谷の洞窟」【神奈川】 :日本珍スポット100景-B級スポット観光ガイド-
http://b-spot.seesaa.net/article/14610397.html

洞窟内部は写真撮影禁止なので絵で紹介できないが、入口でローソクを点けて棒の先に刺し、その灯りだけを頼りに全長1キロの真っ暗な巨大洞窟を巡る。壁にはいつの時代のものともわからぬ(パンフレットを読めば説明はあるが...)修行者たちが彫った仏像や碑文が無数に存在する。

この洞窟は「鎌倉時代に真言密教の修行場として開鑿されたのが直接の起源」だが、古墳時代に作られた横穴墓という説もある。手に持ったローソクの火のゆらめきを見つめながら、ゆっくりと30分かけて一周すると、まるで黄泉の国を巡って帰ってきたような気持ちになる。

・晴れた日は巨大仏を見に
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-748.html

近くにある大船観音と一緒に訪問すると、大船はかなりスピリチュアルな場所なのだなあ(たぶん)。

・迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか
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これは抜群に面白い。

ガンや糖尿病など遺伝が関係する病気は数多い。なぜ人類は進化の過程でこうした病気をなくすことができなかったのか。進化とは有害な遺伝子を淘汰して、役に立つ遺伝子だけを残すという取捨選択のプロセスではなかったのか?。気鋭の進化医学者が進化の仕組みについての最新の科学的見解を披露する。

「ある時代での「進化による解決」は別の時代の「進化による問題」となりうる。とりわけ、進化によって体を適応させようとしてきた環境に、もはや住まなくなったという場合には。」

氷河期を生きた人類は寒さに対応するため水分を排除し糖分を蓄積する必要があった。高血糖ならば血が凍りにくいから厳寒期でも生存率が高まった。ところが気候が温暖化し、食料も豊富になると高血糖は生命に危険を及ぼす糖尿病として人類を悩ませることになった。現在の人類の遺伝が原因の疾病の多くが、ある時代を生き延びるための進化的解決の残存だったことが明かされる。

そして、人は病につぎつぎに侵されることで進化の早送りを行ってきたと著者は持論を展開している。

「人類のゲノムは、ある特定のレトロウィルスによって、別のレトロウィルスに感染しやすいように変えられた。ヴィラリアルによれば、アフリカの霊長類に「別のウィルスに延々と感染する」能力がついたことで、人類は進化の「早送り」ボタンを手に入れたのだという。他のレトロウィルスにさらされることで高速変異を可能にする機能だ。この能力のおかげで、僕たちはサルから人間へと一気に進化することができたというのだ。」

病気のウィルスと宿主の人間は相互に影響しあいながら共に高速に進化することができた。それは老化という現象でさえも同じである。人類は老化がプログラムされた寿命のある製品であると著者は市場にたとえている。製品寿命が有限だから、新商品が普及できるというたとえだ。

「第一に、この方法は新製品や改善版を市場に出す余地を生む。第二に、この方法はあなたに改善版を買わせることになる。アップル社は数年前にiPodを開発したとき、計画された旧式化の考え方を全面的に採用した。取替え不可能な内蔵電池の寿命を一年半ほどに設定しておいて、その電池が切れたら消費者に改善版の新モデルを買わせるというやり方だ。」

つまり、生物の寿命は自然淘汰による進化の速度を決定する。種の進化としては、古い世代が死んで新しい世代に入れ替わることこそ重要なのだ。人間が2倍長生きすると、進化は2倍遅くなる。だから進化によって不死身になることは、まったく期待できない話なのである。

病気の存在理由というユニークな観点から、人類の進化を斬新な切り口で語る。話題は横道も含めて好奇心を刺激するキーワードがたっぷりある。よくできた科学読み物。

5月29日(木) 16:00―16:45 に 東京ビッグサイトで開催されている「Business Blog & SNS World 08」にて下記の講演を行うことになりました。ご関心のある方のご来場をお待ちしております。

このイベントはブログ・SNS等、CGMツールのビジネスシーンにおける活用方法を提案するコンファレンス&展示会です。当日はソーシャルネットワークや集合知をどう企業活動に活用していくか、理論と実践について両面でお話しさせていただこうと思っています。

・イノベーションをもたらす組織の知識資産とソーシャル・ネットワーク
http://www.idg.co.jp/expo/bbsns/program/detail.html#D-27
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【講演内容】

組織のイノベーション力はその知的集積の質に相関する。しかしKMなど多くのITツールが導入されてきたが、組織の知を十分価値に転換できなかった。SNS等は組織のソーシャル・キャピタルを支援する新たなツールとして期待できるが、ツールによって組織は変わらない。グローバルに求められる、ITを使いこなせる組織への変革努力に基づいて、こうした有望なツールを使う必要がある。そこではじめて組織の知が企業の価値に転換される。
(実は私はピンチヒッターとして代役登板なので、内容設定がいつもより堅めなのですが(笑))。

【プロフィール】

データセクション株式会社 代表取締役、株式会社早稲田情報技術研究所 取締役、株式会社ngi groupイノベーションラボ所長、株式会社メタキャスト 取締役、株式会社日本技芸取締役、デジタルハリウッド大学准教授「リサーチ&プランニング」、多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員准教授「知識イノベーション論」、NPO法人オーバルリンクI/O理事。
ブログ「情報考学 Passion For The Future」を運営。


どうか、よろしくお願いします。

・科学する麻雀
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もし私が麻雀現役だった学生時代にこの本を読んでいたら、こういう紹介文章なんて絶対に書かないで、知識を独り占めにしていたと思う。この本を読む前と後では、麻雀の強さが数パーセントは確実にアップしたんじゃないかと感じている。必勝法が書いてあるわけではないのだが、科学的に正しい情報を得て配牌に迷いがなくなるから、確実に余裕が生まれる。

著者はインターネット麻雀対局「東風荘」の実戦データを大量に収集して解析している。数万件、数十万件ものデータをベースに、戦略・戦術の発生確率や勝率を厳密に計算して、長年雀荘で語られてきた根拠のない俗説を次々に論破していく。

まず確率的には、ほとんどのケースで「先制リーチせよ」「手変わりを待つな」が正解になることが明かされる。よほど高い手が狙える稀な場合を除いて、安くても、どんどんリーチで攻めるべきなのだ。

「和了の大部分は、純粋に数学的な理由によって、テンパイ後の短い期間に固まるのだ。リーチすると得点はダマの場合と比較して2倍以上になるので(中略)ダマで和了できる形に、それも高い可能性でそうなってしまう形に取る場合、リーチしないことによる和了時の得点損失を埋め合わせることはひどく困難なのである。」

解析された数字が挙げられている個所を見るとゾクゾクする。

「統計的には持ち持ちの確率は10%程度である」

「ドラ待ち先制カンチャン・シャンポンリーチは実測によると、40%程度の確率で和了できる。また無スジ456のドラ単騎待ちリーチだと20%程度となる。」

「通常、リーチの半分以上はリーチ後6順程度以内に和了する。安全牌候補と呼ぶべき牌が3枚程度もあれば、まずまず上手に降りきることが可能なのである」

麻雀は手牌全体の変化を考えると3順先を考えるだけで1億通りもあるため、牌効率を読み切ることが人間にはもちろんコンピュータにとっても現実的ではない。そこで、実際にはパターンを読むことになるわけだが、どう読むかが後半で詳説されていて読み応えたっぷり。これをもとに麻雀ゲーム用の人工知能を開発できそうな知識が開示されている。

科学的分析が導く結論は、決して必勝法ではないのだが(そもそも麻雀は偶然の確立要素の強いゲームであることも最初に分析される)、科学的にまたは統計的にこれだけは言えるという戦略や戦術を多数教えてくれる。

読んでいたら、うずうずして、久しぶりに打ちたくなってきた。思えば3年くらい前に、雑誌ネットランナー(現ネトラン)の編集部企画で、メイド雀荘での大会に参加したのが最後になっている。真剣勝負はもうずいぶんやっていないわけだが。それでも本書は面白かった。

なお、麻雀用語は説明なしでばりばり使われるし、ゲームとして何が肝なのかを実戦である程度把握していないと、読めないレベルの内容である。理系雀士中級者以上におすすめ。麻雀現役であれば一読の特に価値ありである。

・history.VBS
http://www.vector.co.jp/soft/win95/net/se354044.html
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これは面白い。

「履歴」(History)をHTMLファイルに変換するソフト。

私はいつも秘密保持や負荷軽減のために、Webの履歴を定期的に消している。重要なページはお気に入りに入れているから、消しても大丈夫なはず、だから。だが、消してしまった後にちょっと後悔することがある。お気に入りに登録したページを見つけるまでに、ほかにどんなページを見ていたか、経路を保存しておきたいというときである。似たような調べ物をするときに、何をどこまで調べたかのWeb履歴情報は、見返してとても参考になるからだ。

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このVBスクリプトでできたソフトウェアは起動すると、現在残されているMSIEの履歴をすべて最終アクセス時刻順でソートして、HTMLとして保存してくれる。それぞれのページのアクセス時刻や滞在時間を見ると、自分が何を考えていたか頭の中にはっきりと蘇ってくる。


・図説 異星人―野田SFコレクション
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老舗出版社のZiff Davisが会社更生法を申請して再建中であるらしい。

・Ziff Davis Media、米連邦破産法第11章に基づく再建手続きを申請:ニュース
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20368986,00.htm?ref=rss

私は90年代に寄稿者として昔ZDNET日本語版に記事を書いていたこともあったのだが、社名の由来のZiff Davisって何なのか、これまでまったく知らなかった。Wikipedia英語版には、ちゃんと書いてあった。

・Ziff Davis From Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Ziff-Davis

1927年にシカゴでウィリアム・B・ジフ氏とバーナード・G・デイビス氏が創業したことが社名の由来だったのか。Ziff Davisは飛行機やクルマやカメラや写真、エレクトロニクスなどの高級ホビー分野で長年、雑誌を出版し続けてきた。80年代以降はコンピュータ、テクノロジー分野の出版社になり、近年はインターネットメディア事業に力を入れている。

Ziff Davisは、1920年代から30年代には「Amazing Stories」誌などのSFパルプ雑誌の出版社として一時代を築いていた。この本はそうしたパルプ雑誌を中心に、イラストを収集して、往時のブームを解説する。

・パルプ・マガジン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3

「アメリカSF雑誌が輝きに満ちた時代、その自由奔放なイメージ空間に咲きみだれた美女とベム!タコ型火星人から見事な星間生物園まで、貴重図版満載でおくる大好評「野田コレクション」の真打ち登場。 」

次から次へとでてくる着色添加物たっぷりな感じの、毒々しい異星人デザインがたまらない。20世紀SFのイメージの原点回帰の本だ。こういう米国の古典SFイラスト集を洋書フェアでみつけると衝動買いしてきたのだが、この解説書で情報が整理できたのがうれしい。

・Worlds of Tomorrow: The Amazing Universe of Science Fiction Art
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004172.html

この表紙コレクション本も飛びぬけて素晴らしかった。

ついでに、今年の丸善洋書フェアで入手したアメリカポップカルチャー本では、このプレイボーイ50周年記念本が良かった。

・Playboy: 50 Years : The Cartoons
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「プレイボーイ誌は50年もの間、世界の一流の漫画作家を紹介してきた。そのそうそうたる顔ぶれは、バック・ブラウン、ジャック・コール、エルドン・デディーニ、ジュール・ファイファー、シェル・シルバースタイン、ダグ・スニード、ギャハン・ウィルソンをはじめ、数百人にもなる。流行に敏感な「破壊分子」で、ずるがしこい革命派であるプレイボーイのアーティストは、ほかの男性誌にはない洗練されたユーモアで、現在も支持されている。 今日、プレイボーイは、最もすばらしく、最もおもしろいマンガを集めることで、50周年を祝おうとしている。すべての作品の中からヒュー・M・ヘフナー自身が厳選したもので、性革命、恋愛関係、金、政治などのトピックごとに、含蓄に富むコメントがつけられている。450点以上にのぼる作品は、若者時代の甘い出来事、ふしだらな女、陽気な妻、求婚者、色男であふれている―― 50年間のプレイボーイマンガの騒々しい集大成なのである」

これもまた古き良きアメリカのイメージが満載。

・デスクトップ 全自動4コマ
http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se444172.html
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4コマ漫画を自動生成するフリーソフト。

漫画の主題となるキーワードをひとつ入力すると、漫画テンプレートから、ストーリーをランダムに自動生成する。面白いのは、検索エンジンを使って、関連するキーワードを取得し、適当に漫画のセリフに割り当てるという仕組みがある点。

たとえば「デジタルハリウッド」というキーワードで生成されたのがこれ。


「セカンドライフ」というキーワードはWebから取得されたもの。マルチメディアの学校のデジタルハリウッドは、最近仮想空間セカンドライフの企画に力を入れているから、出てきたのだろう。


気に入らなければ次々に別バージョンをつくることができる。機械がつくるとはいえ、10回くらいに1回は、人間が見てもクスっとするものが出てくる。時事ネタに強い気がする。「話題の言葉のマンガを見る」「関連する言葉のマンガを見る」リンクもある。


なお、このWindowsソフトはWeb版全自動4コマを利用している。Web版では面白い自動4コマのランキング投票が行われている。自動生成作品から、みんなの投票によって本当に面白い漫画を生み出すっていう意欲的な試み。

・全自動4コマ
http://crocro.com/auto4koma/index.cgi


「作成したマンガの画像は、自由にローカルに保存したり、Webにアップしたり、画像掲示板に張り付けたりして構いません。」とのことなので、ブログでも活用できる。新聞みたいに毎日、新作と一緒にブログを書いてみるというのもよいかも。

その気になれば、専用エディタを使って、自分でマンガのテンプレートを作り込むこともできるようだ。

・GreenPrint
http://www.printgreener.com/
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最近気になっている地球環境に優しいソフトウェア。

Webページや文書を複数ページ印刷したときに、余白だらけのページができてしまい、紙が無駄だったなあと思うことがある。だからといって、事前に全ページの印刷を画面で確認して、余白が多いページは印刷しないように設定するのは面倒な作業になる。それを代行してくれるのがこのGreenPrintである。

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GreenPrintはプリンタとして登録される。印刷実行前に画面をシミュレーションして、印刷を行わないでもよさそうなページを検出してくれる。何ページ、何ドルの節約になるかを表示してくれるのも面白い。

それから、印刷せずにPDFに変換する機能もある。印刷実行前のシミュレーション段階で、あまりに余白が多いページ率が高ければ、印刷を断念してPDFにするか、という判断ができるわけで、この機能の追加は気が利いている。

・HYPER-ANCHOR
http://www.hyper-anchor.org/
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ソーシャルブックマークが人気だが、Webブラウザーのお気に入りブックマーク機能は手軽で便利である。しかし、こちらはタグで整理などしないので、いっぱい貯め込んでしまうと、何をブックマークしたのか忘れてしまうことがある。ページ中の何に注目して登録したのか後で思い出せるとよいのに、と思っていたら、このソフトを発見。

たとえば、HyperAnchorを使って、下記のページの一部分「先づ、発句のよきと申すは、深き心のこもり、詞やさしく、気高く新しく、当座の儀にかなひたるを、上品とは申すなり」をブックマークしてみる。

http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-756.html

すると次のようなURLの特殊なブックマークがお気に入りに追加された。

このソフトがインストールされていれば、その部分を直接呼び出せる。

http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-756.html#hyperanchor1.1://DIV[@id="entry-3286"]/DIV[2]/DIV[1]/P[15](37)(3)&//DIV[@id="entry-3286"]/DIV[2]/DIV[1]/P[15](91)(3)

さらにマーカーをひいたかのように、引用部分が色を変えて表示される。

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MSIE版とFirefox版が用意されている。表示スタイルは好みに変更できる。

・戦場の生存術
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1942年生まれ、1961年慶応大学在学中に傭兵部隊の一員としてコンゴ動乱に参加、その後、フランス外人部隊教官を経て、アメリカ陸軍特殊部隊に加わる、というプロフィールの日本人傭兵が書いた、正真正銘のサバイバル術。そんじょそこらの趣味的サバイバル本とはレベルが違う。

前半では実戦の常識が語られる。たとえば敵の数の把握の仕方として足跡からの推測法などが紹介されている。山で遭難したとか、外国で誘拐されたとき、など非常事態に使える(かもしれない)ノウハウとして参考になる(ような気がする)。

「アメリカ陸軍の方式は、かなり人数がいても正確に出る。すなわち75センチから90センチ程度の間隔の線を、足跡がたくさんあるあたりに引く。それから線にひっかかっているのを含め、すべての足跡を算え、その総数を単純に2で割る。これでやると何と18人くらいまでほとんど確実に割り出すことができるのだ。」

男女の違いはつま先の向きに出るから性別までわかるらしい。満腹時に腹に被弾すると命がないから満腹まで食べるな、現地語は知っていても知らないふりをして一方的に情報を得よ、と戦場で生死を分けるポイントが次々に語られている。

圧巻は後半である。そこではもはや日常世界のモラルがまったく通用しなくなる。自分が殺されないために相手を殺す話が満載である。殺されてしまえば何もないのだから、戦士にとって、もはや武士道も法律もないのである。これは経営や人生にも活かせるなと思える話はのっていない。純粋に本物のサバイバルの話だ。

「敵の重傷者を完全に動けなくして、その身体の下へ安全ピンを抜いた手榴弾をセットしておくのは効果的なやり方のひとつだった。」。助けにきた敵の仲間を吹き飛ばすブービートラップのこと。

「だから戦闘が終息に向かっていない限り、降服の意思表示は無視するべきだ。全体が抵抗を止めない限り、攻撃を加えた方が賢明と言えるだろう。」。降参したふりをして攻撃してくる兵士もいるから、全部基本は皆殺し。

「早いとこ白状し、その内容が正確だったら、吐いた人間は生かしておく。もう敵方に戻れないから、こちらの協力者として働くことが多い。また別の利用価値が生じてくるのである。ただ拷問を受けてからようやく吐いたのはダメだ。いつか裏切られるから助命すべきではないだろう。」。助命すべきじゃないのである。

嗚呼。

平和ボケしている私たち日本人だが、平和ボケしていられることの幸福をかみしめるために、この本は価値があると思う。こんなノウハウが使われる日が来てはいけないし、一般人が知る必要もないのがよい社会のはずだ。ただ、戦争の恐ろしさを確認するために価値がある一冊かもしれない。老人の戦場体験よりも恐怖のリアリティが伝わってくる。

・戦争における人殺しの心理学
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/post-365.html

・SAS特殊任務―対革命戦ウィング副指揮官の戦闘記録
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/05/sas.html

・日本文化の模倣と創造―オリジナリティとは何か
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コンテンツビジネスに関わるすべての人が一読の価値ありの名著。

日本と世界の文化史における模倣と創造の関係を多面的に検証し、ものまねではないオリジナリティの追究という幻想を打ち壊す。歴史を振り返ってみれば、ものまねこそクリエイティティの源泉だったのである。

冒頭で紹介されている、類似したものを選ばせる認知実験の結果が興味深い。異なる観点で似ているものを指摘させた場合、西洋人は形状的な特徴の類似を重視する人が多いのに対して、日本人は色彩・素材・質感・肌ざわりなど非形状的な特徴に着目する人が多いという結果が出ている。

「この傾向は、一見似ても似つかないもののあいだに類似点を発見する能力、すなわち「見立て」につながる。日本で「見立て」の文化が華開いたのは、案外、日本語が持つ文法構造のせいなのかもしれない。」

こうした類似性の認知能力をベースにした模倣によって、日本や世界の文化は発達してきた。特に日本の伝統文化には芸道の「守・破・離」や家元制度などは、先人の技芸の模倣から発展していく「再創」の文化であった。浮世絵の特徴を数量化した研究では、それぞれが独創的に思える絵画も、作風や流派によって客観的な類似点があることが判明する。ものまねが美を生み出してきたのだ。

そして大量複製技術の登場によって、模倣は一層重要なキーワードとなる。

たとえばモナリザはなぜ有名なのかといえば、写真などのコピー技術の普及で広くその複製が目にされたからだと著者はいう。オリジナルのモナリザを肉眼で見たことのある人はそれほど多くはない。モナリザが価値あるオリジナルであるのは、大量のコピーのおかげなのだ。

これは合法・違法のコピーが氾濫するインターネット時代において大変に興味深い理論だ。「コピーされた図像が普及すれば、オリジナルの価値はたかまる。皮肉なことに、絵画のオリジナル性は、コピーの広がりの程度によって規定される。オリジナルであることは、コピーであることの裏返しだとするならば、オリジナルはそのコピーとの関係的な価値に過ぎず、オリジナルに何か実体的な価値を想定すること自体が誤りだということになる。」

著作権はかたちを変えていかねばならない。それには文化を保護するための著作権という考え方を改めないといけないようだ。そもそも日本に「コピライト」を輸入したのは福沢諭吉であった。この本はその経緯をよく調べている。福沢自身が出版ビジネスによって財をなした人でもあった。日本における著作権の起源がこう結論されている。

「諭吉は、「著者の知的な創造に対する権利」という今日的な意味での権利の保護を主張したのではない。諭吉は、「コピライト」をあくまでも経済の原理として考えていた。諭吉をもって日本の著作権とするならば、著作権は最初から文化の問題ではなく、経済の定則として主張されてきたことを、われわれは再認識する必要がある。」

後半はテクノロジーの世界のオープンソース文化について言及している。リチャード・ストールマンをはじめ、オープンソース運動の担い手たちは、禅や日本的思想に通じている人が多い。いうまでもなく、オープンソースは典型的な再創のコミュニティである。元IBMで情報学が専門の著者は、日本の連歌の手法になぞらえて次のように語る。

「オープンソース開発に優秀なプログラマを終結させるには、連歌の「発句」にあたるプロトタイプ、あるいは開発の目標が魅力的であることが大事である。魅力ある「発句」でなければ、よき会衆を得ることは困難である。」

そう、このよき発句あるところに人が集まりCGM(ConsumerGeneratedMedia)の華が咲くのだ。2ちゃんねる、ニコニコ動画、ブログ、SNSなどインターネットの創造性の大半は、よき発句から生まれたもの、だろう。

良い発句とは、連歌書の古典「筑波問答」によれば次のように規定されていた。「先づ、発句のよきと申すは、深き心のこもり、詞やさしく、気高く新しく、当座の儀にかなひたるを、上品とは申すなり」。何世紀も前に再創の本質がここまで看破されていたとは驚きだった。この文言を会社の壁に貼ってやろうかと思った。

このように著者の着眼点が鋭く、論証に説得力がある。最初から最後まで50枚近い付箋を貼って熟読し、最後にこんな結びがあった。まさにそうした新しい時代の模索を始めるための教科書として読むべきだと思う。

「デジタルコピーの力によって、情報の排他的な所有という近代のパラダイムは終焉を迎えるだろう。わたしたちがいまするべきことは、デジタルのコピー力を人類の文化的な豊かさにつなげるための方法を模索することではないだろうか」

・日本という方法―おもかげ・うつろいの文化
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/post-508.html

・模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003155.html

高野聖

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・高野聖
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篠田節子のが「レクイエム」のあとがきで、影響を受けた作品として泉鏡花の「高野聖」をあげていたのがきっかけで手に取った。明治時代の幻想小説集。特に「外科室」「高野聖」が印象的だった。

「外科室」
胸を病んだ美しい伯爵夫人が病室で頑なに手術を拒む。切られることが嫌なのではなく「私はね、心に一つ秘密がある。麻酔剤は譫言を謂うと申すから、それが怖くってなりません。」という。夫に麻酔を打つことを請われても「いやです」という。切らなければ夫人の命はない。高峰医師は夫人のいうままに麻酔なしでの手術に挑むのだが...。

「高野聖」
峠道に迷い込んだ旅の僧が山の奥深くに人の住む小屋を見つける。そこには美しい女と痴呆の夫がひっそりと暮らしていた。僧は女にもてなされて"花びらに包み込まれるような"隠微な体験をして、人里へ帰ってくるが、後に女の正体を聞かされる。

二編とも女性の優しさ(魅力)と怖さ(魔力)が主題にあるように思う。ふたつが合わさって妖しい美しさを醸し出している。このことについて、日本文学研究者の山田有策が充実した巻末の解説を書いている。

「先述もしたが、鏡花文学が現代においてますます魅力を増大させている最大の理由はその世界の底に流れる<女性的なるもの>への限りない憧憬にあると言ってよい。それが<フェミニズム>の時代たる現代にフィットしている所以であろう。しかし、それがその深層にしまい込んで忘れはてている何か、あるいは自然界の秩序の裏側に潜む何かとクロスし合っているからこそ、それは私たちの胸奥を刺激し、なつかしさをかきたててやまないのだ。」

泉鏡花の描く女性は、現代にはないほど、慎み深く、嫉妬深く、怨みがましく、慈愛に満ちている。心にある秘め事をうわごとで言ってしまうのが怖くて麻酔を拒む女性という設定が現代では成り立ちそうにない。明治から現代にいたるまでの間に、女は強くなったが怖くはなくなったということか。

・レクイエム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-752.html

・LocalCooling
http://www.localcooling.com/
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素晴らしいコンセプトのフリーウェア。LocalCoolingは節電アプリケーションである。デスクトップを監視して消費量を最適化する。

世界では今日、パソコンの電源をこまめに落とすのを忘れているために、1時間当たり300憶キロワットのエネルギーが浪費されているそうだ。これは金額換算では300億ドルに相当する。排出される二酸化炭素量はパソコン15台で車1台分に相当する。ただパソコンの電源をこまめに切るだけで、環境にも経済にも優しい対応になる。

しかし、こまめにというのが人間にとっては億劫だ。

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LocalCoolingはPCを監視して、あらかじめ設定した時間、PCの操作がなかった場合に、

・モニターの電源をオフにする
・ハードディスクの動作を停止する
・PCの電源を落とす、または、休止状態にする

といった処理を自動で行ってくれる。

もちろん、このように自動で電源を最適化してくれるアプリはこれまでもあった。LocalCoolingが面白いのは、節約したエネルギー量を数値で表してくれることだ。モニター、ハードディスク、CPU、グラフィックボード、その他(ファンやサウンドカード)の部品別消費電力も見ることができる。

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LocalCoolingではこのソフトを使って、個人や組織単位で、節約量ランキングを発表している。このソフトがどこまで正確に電源消費量を計測しているのかは不明な部分もあるが、少なくとも個々人のパソコンの使い方次第で電源消費量が変わるという事実を意識させるインパクトはある。

・蟹工船・党生活者
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プロレタリアート文学の名作 小林多喜二の「蟹工船」が、例年5倍の異例の売れ行きで、2万7千部を超える増刷がかかったと読売新聞が報じている。1929年世界大恐慌のころの作品だ。死ぬまで船の上で働かされた労働者たちの姿が現代のワーキングプア層の共感を得ているということらしいのだが...。アマゾンで売り切れていたので、丸の内の丸善で平積みになっていたのを購入。

・「蟹工船」再脚光...格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20080502bk02.htm

蟹工船は実によくできた小説だ。貧しい労働者たち400人が高級カニ缶詰をつくるため蟹工船に乗って北の海へ行く。蟹工船は工場だから航海法が適用されないオンボロ船。遠方の海洋上にあっては労働法も平気で無視される。劣悪な環境下で徹底的に搾取される日常と、死の制裁によって殺されていく同僚の姿を見て、労働者たちは遂に戦う決意をする。暴発するまでじわじわと高まっていく集団の緊張感がリアルだ。

格差社会の文脈と重ね合わせるのが適切かどうかはよくわからないが、人間心理や群集心理をスリリングに描いた迫力あるドラマだから、なにかのきっかけで再読されると人気が出るのだと思う。

・マンガ蟹工船―30分で読める...大学生のための
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小林多喜二の死というメタ視点から漫画が始まるが、ストーリーは「おい、地獄さ行ぐんだで!」という有名なセリフから、とても小説に忠実に物語を描いている。解説なしでは小説で理解しにくかったシーンが、ビジュアライズされていてわかりやすい。小説や作家の背景を扱う巻末の解説もとても充実している。まさに大学生のための、という作品。

・旬がまるごと マザーフードマガジン 「かに」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-741.html

・個人情報マスキングツール
http://www.geocities.jp/kan_252525/kojinmask.html
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会社には、お客の個人情報が入っているので、外部の組織に出せないファイルって多い。しかし、外部対して、だいたいどんなデータを持っているのかを伝えないと、開発やソリューションの提案をもらうことができない。だから、そこに含まれる個人情報を匿名化する必要が出てくる。

個人情報を見つけ出して消していく作業は、かなり手間がかかるが、情報保護の観点から、安易にアルバイトに任せるわけにもいかない。そこで、SI会社の現場の人が開発した、このツールが役立つ。

個人情報マスキングツールは独自のアルゴリズムで、ファイルの中から、個人情報らしきデータを発見し、指定した文字に一括変換する。たとえば名前を「橋本大也」→「名名名名」にしたり、住所を「住住住」、電話番号を「TTTT-TTTT」に変換する。

マスクできる個人情報は以下の通り。

・2バイト文字
・1バイトカナ文字
・電話番号
・日付
・携帯電話番号
・2バイト都道府県市町村名

対応ファイルはフラットファイル(テキスト)またはCSVファイル。

もちろん処理は完全ではないので目で確認する必要があるが、説明資料やサンプル作製に実用的なツールであると思う。

・びっぐりURL
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参加者が、ネットにつながったパソコン画面を、プロジェクターの大画面で見ながら、わいわい会議をするのが好きだ。会議の内容に応じて、キーワードを検索したり、関連サイトを見て話を進めると「持ち帰り」がなくなる。

しかし、画面で見るブラウザーのURLの入力欄は小さいので、みんなに見えにくいことが多い。入力している人以外、何をしているのかわからない時間ができてしまう。これはいけない。うろおぼえのURLやキーワードを集合知で正確化することって弊社では多い。URLをメモに残したい人もいる。意外にURL入力欄の共有は必要なのだ。

びっぐりURLは、タスクトレイをクリックすると大きなURL入力欄を表示する。クリップボードにあるURLを開くこともできる。これなら、これから開こうとしているURLをみんなで共有できる。

置換ボタンをクリックすると、2ちゃんねるなどでよくつかわれる"ttp://"、"tp://"、"p://"を"http://"へ置き換えることもできる。2ちゃんのスレを見ながら会議する場合(いい会社だ(笑))に便利だ。

・Typict
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/art/se441649.html
typict01.jpgのサムネール画像

デジカメで撮影した写真を整理するときにフォルダわけを行いたいと思うことがよくある。最近はメモリが大容量なので一度の撮影で何百枚も撮れてしまう。後で選ぶことを前提に、似たような構図で条件を変えて大量に撮るからだ。

しかし、後で選ぶのが面倒な仕事になる。写真はある程度大きく表示しないとピンボケやノイズを発見できないので、サムネイル一覧ではなく1枚ずつ表示が必要になる。だからといって、画像ビューアで確認してフォルダにドラッグアンドドロップで移動させる手作業では1枚当たり軽く10秒くらいかかってしまう。

Typictは画期的な画像整理ツールだ。1枚ずつ、写真を見ながら、キーボードだけで写真をフォルダに振り分けることができる。たとえば、

1キー → 「大賞」フォルダ
2キー → 「次点」フォルダ
3キー → 「修正」フォルダ
Pキー → 「印刷」フォルダ
Fキー → 「Flickr行き」フォルダ
Zキー → 「ボツ」フォルダ

のように設定しておくと、写真の出来具合や用途で整理することができる。

EXIFデータや、次の写真のサムネイルが同時に表示されたり、ファイルのリネームも可能であったり、写真の整理にとても便利な機能が満載である。画像だけでなく、あらゆるファイルをこの方式で分類できるといいのではないか、と感心してしまう。

レクイエム

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・レクイエム
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朝起きると居間で妻がどんよりとしているので、どうしたのかと聞くと午前3時頃目が覚めてしまったので、私が机の上に置き忘れた篠田節子の短編集「レクイエム」を読んだのだという。1本目の「彼岸の風景」を読んだら人の生き死にの話で重たかったので、このままじゃ寝れないと思ったそうだ。ラストの標題作「レクイエム」が短かったので口直しのつもりで読んだら一層重量級でとうとう朝まで眠れなくなったという。

長編が得意な篠田節子だが、短編も完成度が高い。世界観が確立されているから、一本読むと次にひきこまれる。不吉なムードの作品ばかりなのだけれど朝まで読みたくなってしまう気持ちはよくわかる。

あとがきで短編のあるべき姿を自らこう語っている。「優れた短編小説は決して小さく愛らしく洒落たミニアチュールではない。優れた短編小説の要件とされる、鋭い切れ味、驚き、人生の一断面を切り取る鮮やかさ、人情の機微、といったものに私は関心がない。短い物語の中には、人生の一断面ではなく、複雑な世界を丸ごと封じ込めることもできると信じている。」

設定は6編ともまったく違ってバリエーションが豊か。

・死期の迫った夫との里帰りで起こる不思議「彼岸の風景」
・神様に翻弄される女性の忙しい一生「ニライカナイ」
・仕事人生に挫折した中年女性が迷い込む都会の迷宮「コヨーテは月に落ちる」
・橋の下のテントに暮らす老人たちの人生をのぞきこむ不動産営業マン「帰還兵の休日」・隣家の幼児虐待を発見してしまった独身女性の葛藤「コンクリートの巣」
・死んだら腕を一本パプアニューギニアに埋めてくれと遺言した大教団幹部の伯父の真意を探る「レクイエム」

共通しているテーマは喪失と鎮魂ということ。人間は若さや可能性と引き換えに、人それぞれに違ったなにかを手にして、自分の人生を飾っていく。そうした飾りにあるときふと虚しさを覚えた人たちが主役の物語だ。30代後半以上の人におすすめ。

・カノン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-740.html

・弥勒
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005292.html

・ゴサインタン―神の座
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005260.html

・神鳥―イビス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005177.html

呼吸入門

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・呼吸入門
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「声に出して読む日本語」などで有名な斉藤孝氏による呼吸のノウハウ本。「私は呼吸法研究に自分の生活すべてを賭けていた。」という同氏は若い頃に呼吸法研究にのめりこんだことがあったらしい。この本ではその二十年間に及ぶ研究のエッセンスが紹介されている。

真髄は「鼻から三秒呼吸を吸って、二秒お腹の中にぐっと溜めて、十五秒間かけて口から細くゆっくり吐く」という三・二・十五の斎藤式呼吸法である。「息を長くゆるく吐き続けることによって、セロトニン神経系という攻撃衝動を抑える神経系がうまく働き出すのです。」などという効能の説明もあるのだが、なにより、これを実際にやってみると気分が落ち着く。

「息をどれだけ長く深く続けることができるか、息と動きをどれだけ連動させることができるか---息の力とはこの二点にクリアに集約されます。というのも、動きと連動した深く長い息こそが、モードの持続力を決定する。それは脳の働きと密接なかかわりを持っています。」

三・二・十五の呼吸法をパソコンの前で練習するために、使えるソフトを見つけた。

・活き息
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/home/se365047.html
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「呼吸法ソフト「活き息」は、上下するアニメーションに合わせて腹式呼吸を行うパソコンソフトで、表示アニメの動きと、表示位置の工夫で、会社でパソコン作業に集中しながらでも、作業を中断することなく、腹式呼吸ができるよう配慮されています。
また、自分で設定したインターバルで自動起動しますので、呼吸法を楽に習慣化できます。」

デスクトップ上をキャラクターが上下するのに合わせて呼吸をする。画面にオーバーレイする形なので、仕事の作業をしながらでも無理なく使うことができる。任意の秒数設定ができるので、3,2,15秒に設定すればこの本のメソッド用にもなる。なかなか便利だ。結構、こういう健康系ソフトの重要って今はまだ特殊な分野だが、これから伸びるかもしれない。

・歴史Web―日本史の重大事件がホームページになった!
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「なんと、二千年前からインターネットがあった!?」

この本には、このたび発見された弥生時代から江戸時代までの、200ページ以上のホームページが掲載されている。邪馬台国や鎌倉幕府のオフィシャルサイトや、縄文時代の個人サイト「私の土器コレクション」、清少納言のブログ、関ヶ原の戦いのスレ、武将の人気状況がグラフででる「戦国検索くん」、パスワード保護された「大奥」サイトなど、いかにもネットにありそうなデザイン。

重大事件ではいくつものページが掲載されていて流れがわかる。たとえば明智光秀の「十兵衛日記」は信長に対する不満たらたらのブログが、本能寺の変の当日には「接続が集中し、大変つながりにくい」状態になる。そしてその11日後には「管理者により削除」されている一方で、「秀吉のさるさる日記」には殿の仇を討ちとってやったりの報告が出ている。

予備校講師らが制作しているので、ジョークとはいえ細部も真面目に作り込まれている
。著名人のブログの外部リンク先だとか、バナー広告の中身、コメント書き込みなど、初見では見落としてしまうところで芸があって楽しい。2時間くらいで読んで読めたと思うなと著者が書いているように、こだわって作られている。

・「ちょwww豊臣」「義経サマ萌え」――ネットの住人目線で「歴史を身近に」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/15/news092.html
この本についての著者インタビュー記事。画面紹介もある。

大人が楽しく日本史のおさらいになる。受験生の息抜きにもよさそう。細かいツッコミに笑いながら、まじめな学習効果が期待できる本のように思う。

パロディとしての歴史サイトの書籍というコンセプトが愉快だ。本当にここに出ているようなWebを実際のインターネットに作っても、意外にはずしていた気がする。書籍でやるからユーモアが生きているんじゃないかな、これは。

・オンサイト! 1
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・オンサイト! 2
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「夏子の酒」の尾瀬あきらが少女を主人公に描いたフリークライミングがテーマの漫画。「オンサイト」という言葉からシステムの保守業務を連想してしまうのは職業病かな。このタイトルのオンサイトは、誰かのルートを追うのではなく、初見で登攀に成功することを意味する山岳用語だ。

小学生の少女麻耶は、岩に登ることに夢中の少年舜と出会って共に山登りをはじめる。ライバル意識を燃やしながら、異性として微妙な二人の関係が、甘酸っぱくてさわやかで、この作品の最大の魅力。誰かの道を追うのではなくて自分の道を行くという意味で「オンサイト」な麻耶と舜のひたむきな青春の物語。物語もいいしフリークライミング(ボルダリング)という競技の内容や面白さも伝わってきた。

実はこの漫画は全2巻で二人が中学卒業の段階で第一部が終了し連載が止まっている。ここまででも十分面白いのだが、続けていたら大傑作になりそうな下地ができているだけに、ものすごくもったいない気がする。再度、続編を書いてほしいと切に願うばかり。


・Expeditions Vol.2 クライミング・ザ・ビッグ・ウォール: アレックス・ロウ, ジェアード・オグデン, マーク・シノット, リン・ヒル
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「第1話「グレート・トランゴ・タワー」
パキスタンのカラコルム山脈中心部にそびえ立つ、ロック・クライミング史上最難関とされる6,286mの巨大な岩壁グレート・トランゴ・タワーに挑んだ世界中のクライマーから多大な尊敬を集めるアレックス・ロウ、ジェアード・オグデン、マーク・シノットの3人のチームによるファースト・アセントの記録を追う。
第2話「マダガスカル:女性クライマー リン・ヒル」
カリフォルニア ヨセミテ谷のノーズルートを最初に征服したことで知られる最も有名な女性クライマー、リン・ヒル率いる女性クライマーたちによるマダガスカルのツァラノラ・マッシフ、初制覇の道のりを追う。ナレーションを、世界的ミュージシャンである元ポリスのスティングが務める。 」

2編収録のうちの1編はオンサイト!に主人公の憧れの人物として登場した、トップ女性クライマーのリン・ヒルのドキュメンタリ。垂直に見える、とてつもない絶壁に何週間も張り付いて、ひたすら登り続ける映像に圧倒される。

このDVDのExpeditionsシリーズは、危険なアウトドアスポーツの魅力を、ぐうたらでも鑑賞できるので好き。まさか絶壁には登れないが、室内ボルダリング練習場があったら体験してみようと思った。

・カラオケ化する世界
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こんなに凄いことになっていたのか、KARAOKEって。ロンドン大学の歴史科研究員が現代の世界各国のカラオケフィーバーぶりを、情熱的にフィールドワークしてまとめた比較文化論。日本ではすこし冷めた感じがあるカラオケだが、その熱狂は世界に確実に波及していた。

「歌に対する人類の夢を具現化した機械・カラオケは、その誕生から三十年を経ずして全世界に普及した。世の様々な文化流行を見ても、これほどの短期間に、これほど広範囲の普及を見たものは他に類を見ない」

韓国では「国技」と呼ばれるくらい国民の娯楽として浸透している。ビジネスコミュニケーションに必須の潤滑剤にもなっているらしい。タイやインドネシアではセックスを提供する「アダルトカラオケ」も繁盛している。シンガポールや台北、上海にはカラオケタクシーまで登場した。

アメリカではカントリーと融合して「カラオケカウボーイ」いるし、イギリスではパブ文化と融合してストレス発散の場として人気がある。ユニークな発達を遂げてしまった例もあって、スコットランドでは無音のポルノ映画にみんなで勝手に喘ぎ声や効果音をつける「ポルナオケ」だとか、ニューヨークのアングラ「全裸カラオケ」はびっくりだ。

英語教育にカラオケを取り入れた国も多い。五感身体をフルに使うから学習効果はありそうだ。仏教カラオケ「悟りの旅」「俗世の旅」「解脱」、キリスト教の「教会カラオケ」など宗教でもカラオケは積極的に使われている。

写真もたくさん使って各国カラオケ事情が語られている。発見再発見の連続だった。「カラオケは日本に発祥するものであるが、既に完全にグローバルなものとなっている。各国は今や既存の文化の中にカラオケを取り込んでいる。」と著者は結論している。

日本人はもっとカラオケの生みの親であることを誇りにしてよさそうだ。カラオケの発明は1970年代。日本人の井上大佑氏が発明者と言われている。特許をとっていれば毎年百億円以上の収入が見込めたという。特許がなかったから広まったのかもしれないが。

1960年代に音楽で世界を変えようとしたボブ・ディランより、本当に世界を大きく変えてしまった井上氏の方が音楽の世界において、すごいひとなのではないかと思った。ちゃんと歴史に残すべきである。

最終章ではインターネットや最新テクノロジーと融合したカラオケ革命がレポートされている。インターネットやケータイと連動するサービスが紹介されている。今後の展開として個人的に注目しているのはWiiカラオケだ。商用配信レベルの内容がWiiで可能になるとするとカラオケブーム再燃もあったりして。

・Wiiがカラオケに 「JOYSOUND Wii」来春登場
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/10/news068.html

・ワールドインク なぜなら、ビジネスは政府よりも強いから
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著者は国家より企業が強大な力を持つ時代になったことを次のような事実で指摘して見せた。

・世界の経済主体の規模を比較すると、上位100位に含まれる51の組織は企業であり、国家ではない。
・海外資産の20%を、多国籍企業の最大手100社がコントロールしている。
・世界の総資産の25%は、多国籍企業の大手300社により所有されている。
・世界貿易の40%もが多国籍企業の間で行われている。
・国内総生産(GDP)が、世界最大手六社のそれぞれの年間売上高を上回る国は、二十一カ国しかない。

もはや世界経済の主役は国家ではなく大企業であり、それらの企業の持続的成長の最大の課題は社会ニーズへの対応にあるとする。アダム・スミスの国富論的経済学の終焉と新しい経済社会原理への転換が起きようとしていると説く。

新しい世界では、企業は従来の「価格の引き下げ」「品質の向上」という目標に加えて「社会のニーズへの対応」が強く求められる。政府の規制によって取り組むのではなく、自ら社会ニーズを追及していく姿勢が消費者に高く評価され、強力な社会ブランドとなる。それが新しいワールドインク時代のゲームの勝者は、社会対応の前線=Sフロンティアで勝利をおさめなければならないと著者はいう。

社会やエネルギーに対する配慮をハイブリッドカーに織り込んで世界をリードするトヨタ、社会のデジタルデバイド解消(e-inclusion)のイニシアチブをとるHPの2社について、章を割いてのケーススタディがある。

世界経済を揺るがしたエンロン・ショックの後に、投資家もまた考え方を変え始めている。キャップジェミニ・アーンスト&ヤング社は「今日の経済は、ナレッジやR&D、イノベーションなどの資産を基盤としており、これまでにない課題を提示してくる。それは無形資産を評価するという課題だ。」という考え方で、新しい企業価値の評価方法バリュー・クリエーション・インデックス(VCI)をつくった。

VCIは「ブランド開発やりーさーシップ教育、研究開発への企業による投資は、いまや有形資産への投資の総額を上回る。」とし無形資産を定量化する指標だ。現状より遅れて現れる(売上や利益のような)遅行指標ではなく、環境対応や労働政策、企業ガバナンスへの対応のような先行指標の比重が高い指標である。

著者が語るような社会対応型資本主義が実現されれば、世界を良くしようとする消費者、企業、投資家たちが自然と経済的に勝者となり、世界はバラ色になっていくように思える。重要なのはその前提となる「グローバル・エクイティ文化」が社会に広く浸透するかどうかだろう。そのためにもこの本に数例あげられたような成功企業の事例分析がなされることが、まずは説得力になるのではないかと思った。

・Country Codes
http://www.izoxzone.com/product/app/cc/index.htm
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日本のIOCコードは「JPN」で、ISO通貨コードは「JPY」で、国際電話のダイアリングコードは「81」である、といったように国際機関が決めている国別コードというのが世の中にはたくさん存在する。CountryCodesはそれらの情報を網羅的に調査する。

最初に国名を選ぶと国旗も表示されて情報が一覧できる。ここで日本のカントリーコード一覧を「Copy All」で取得すると、以下のようなデータがクリップボードに入力された。HTMLで出力することもできる。

Country Name: Japan
Long Name: -
Type: Nation
Dependency Of: (Does Not Exist)
Location: Eastern Asia
TLD Code: .jp ( http://www.iana.org/root-whois/jp.htm )
ISO Alpha-2 Code: JP
ISO Alpha-3 Code: JPN
ISO Number: 392
IOC Code: JPN
ISO Currency Code: JPY
Language abbreviation: JPN
FIPS 10-4 Code: JA
GMT Deviation: +09:00:00
Extra Information: https://www.cia.gov/cia/publications/factbook/geos/ja.html
Extra Information II: www.wikipedia.com/wiki/Japan
Distinguishing sign: J
Dialing Code: 81
Countries with the same dialing code: -
IDDD Code: 001 (KDD)
010 (MYLINE/MYLINE PLUS)
0061 (Cable & Wireless IDC)
0041 (Japan Telecom)
NDD Code: 0
City: * Tokyo 3 35° 41' N 139° 46'

Airport nameからは各国の飛行場コードをみることができる。

AirportNameの項目では飛行場の略号を知ることができる。成田はNRT、関空はKIX、ロサンゼルス国際空港はLAXといった、あの暗号である。仕事の出張関係の情報として目にして、それってどこだっけ?と思うことがよくあるのでこれは個人的には便利。

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世界地図上で場所を確認する機能もある。

・Crayon Physics
http://www.kloonigames.com/blog/games/crayon
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クリエイティブなゲームを発見。2008年度のIndependent Games Festivalで大賞を受賞(賞金2万ドル)したCrayon Physics。

・The 10th Annual Independent Games Festival
http://www.igf.com/02finalists.html

現在はプロトタイプ版をダウンロードできる。

マウスを使って画面にクレヨン調で落書きした線図形が物理法則に従って動き出す。動く図形を誘導して★のマークまで誘導するとクリア。「テレビ番組のピタゴラスイッチ」みたいだ。クレヨンで手描きというのがアナログなよい雰囲気を醸し出している。

日本のゲームには同じように手描きのキャラクターが3Dになって動き出す「ラクガキ王国」シリーズがあるが、Crayon Physicsは画用紙に描いたそのままが動くシンプルさが素敵である。

・ラクガキ王国2 魔王城の戦い TAITO BEST
http://www.garakuta-studio.com/

Deluxe版が開発中らしく映像がアップされている。

・晴れた日は巨大仏を見に
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「日本中の大仏を見にいくことにした。大仏のなかでも、とりわけデカい巨大仏を見にいく。これを巨大仏旅行といい、そんな言葉があるのかというと、今私がつくったのである。昭和から平成のはじめにかけて、日本各地にやたら大仏が建立された。それまでは日本一の大仏と言えば奈良の大仏と決まっていたが、今やその何倍もの高さを持つ巨大な仏が北海道から九州に至るあちらこちらに出現している。」

牛久大仏、淡路島世界大観音、北海道大観音、加賀大観音、高崎白衣大観音、九州の巨大仏、会津慈母大観音、東京湾観音、親鸞聖人大立像、仙台観音、太陽の塔(大仏ではないが)など、日本中の巨大仏紀行文。

著者は大仏にハマったのは幼少の頃に見た神奈川県の大船観音を見たのがきっかけだったとカミングアウトしている。実は私は大船の隣駅に子供のころから住んでいるので、今も昔も東海道線に乗るたびに、つまり毎日のように大船観音を眺め続けている。

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慣れるということがない。何度見てもゾクッとする。ヌッと山の上に真っ白に現れる上半身だけの観音は、真っ青な青空と真っ白な対比が一番ゾクっとするが、夜の闇にほのかに見える姿もゾゾゾっとする。

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「突然不穏なことを言うようでなんだが、世界平和大観音にも牛久の大仏にも、ぬっとした巨大仏は、何か妖怪的な、見ようによっては、人間のことなどまったく知ったことではないというような、非情な手触りがないだろうか。仏さまだから、本当は慈悲の心に満ち溢れているはずなのに、そんなもん一切わし知らんがな、とでもいうような冷たさが、巨大仏にはないだろうか。」と著者は書いている。

・Popuload
http://www.popuload.com/download.php
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待ち時間が長いエレベーターの前には鏡を置くとよいという。鏡を覗いて身だしなみチェックをしている間にエレベーターが到着するから、心理的には待ち時間が短縮されたように感じられるから、だそうだ。それと同じ原理で、パソコンの待ち時間を短縮するのがこのソフトウェア。

大きなファイルのダウンロード、大きなファイルのコピー、プリンターへの出力などの待ち時間が発生すると、Windowsでは進行状況を表示するバーが表示される。Populoadをインストールしていると、それに並んでネット上のニュースが表示されるのだ。

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Popuploadの正体はRSSリーダーで、あらかじめ登録されているニュースからカテゴリを指定することで、関心のある内容に絞り込める。これでダウンロード時間が10分と表示されても、退屈しないですむ。

・一冊のノートで始める力・続ける力をつける―人生も仕事もうまくいくアイデアマラソン発想法
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ここ数年実践している「アイデアマラソン」メソッドの創始者、樋口さんの最新刊。

「新しいことをしようとする場合の、基本の原案は、どうもパソコンよりも、ノートの方が使いやすい。計画の内容がどんどん詳細になっていってペンで細かく追記して、詳細計画の項目の肩が触れ合うような緻密な計画になってくる。」

写真術の本でデジタルカメラよりもフィルムカメラの方が、フィルムを惜しんで一枚一枚構図や露出をを考えて写すから、上達が早くなるという話を読んだことがある(逆だという人もいるが。)。メモに置き換えると、パソコンで書いた文字は簡単に消せるが、ノートにペンで書くと消せない、という違いも大きいと思う。ノートに書くときの方が、なんとか形にしなければいけないという想いが強く作用すると思う。

ペンや紙との摩擦を手に感じる身体性や、視線の方向の違い(ノートは下を向く、PCモニターは正面を向く)も大きそうだ。どちらがよいというよりも、発想に詰まったら方法を柔軟に変えてみるのがいいのかもしれない。

なんでもデジタルで処理することが先進的な時代は終わった。今は上手にアナログとデジタルの使い分けができることが大切だ。この本ではアイデアマラソン実践に際して、紙のツールとしてのノートを、デジタルのツールとどう融合させて使っていくかが書かれている。

たとえば「仕事でも、待ち時間が決まっているような場合には、その短い時間に、簡単に処理ができる仕事を挟む。たとえば、パソコンのスイッチを入れる前に、ノートを拡げる。ノートを拡げ終わってペンを取り、それからパソコンのスイッチをいれるのだ。そうすれば、パソコンが立ち上がるまでの電子の速度としては異常に長い数分間を、ノートを見ていて思考する時間に充当できる。」。

これは私も最近実践を始めたノウハウだった。付箋とノートを身の回りに偏在させる。会社と自宅で1日2回PCを起動させるので、1日2つ月に数十本はアイデアを増やすことができる仕組みだ。大した発想がでなくても作業前の脳のアイドリングになる。

無駄なコピー印刷は減らすべきだが、アイデアを書きだすメモやノートは、過剰なくらい用意して、オフィスや自宅に置いておくというのが2台目のパソコンを買うよりもずっと安くてずっと効果がありそうだ。

始める、続けるということが主軸のまとめ方なので、季節柄フレッシュマンに特におすすめの一冊である。

・普通の手書きメモがデジタルに エアペン アイデマアラソン スターターキット
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005043.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・「金のアイデアを生む方法 "ひらめき"体質に変わる本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004920.html

・目をみはる伊藤若冲の『動植綵絵』
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江戸時代の画家 伊藤若沖(1716-1800)畢生の大作「動植綵絵」全30作品をカラー印刷で収録。全体図だけでなく、主要部分の拡大図も用意されているので、細部をじっくりと鑑賞できるのが素晴らしい。美術館でもこれだけ精細に間近では見られないだろう。

有名な「南天雄鶏図」に代表される鳥の絵が鬼気せまっている。ニワトリやオウムのくせに威厳にみちていて神々しい。かっと見開く鳥の目に見る者は威嚇される。まさに目をみはる絵だ。

若沖は自分の絵について「いまのいわゆる画というものは、すべて画を画いているだけであって、物を画いているものはどこにもない。しかも画くといっても、それは売るために画いているのであって、画いて画いて技を進歩させようと日々研鑽するひとに会ったためしがない。ここが私のひととちがっているところである。」と述べている。自分の目でみたものしか描かない。徹底的なリアリズムで対象に迫る。物と若冲が対峙するところに「神気」が生じると若冲のパトロン大典和尚は評している。

裕福な商家に生まれた若沖は、幼少のころから学ぶことが嫌いで、趣味もなく、およそ才能というものと無縁な子供と周囲には思われていた。ひとづきあいが下手で家業をまともに継ぐことができず、丹波の山奥に二年隠れていたという説もある。変人として生涯独身を通した。

絵は二十代後半に始め、狩野派に学ぶが中国絵画の模写や流派の真似ごとが嫌になる。自分の目で見たものを見たままに描くスタイルを確立するのは40を過ぎてからであった。屈折した性的願望を妖艶な美に昇華させたと多くの研究者が指摘しているように、内に貯め込んだ情念が噴き出しているように感じる。これは一種のアウトサイダーアートであるといえるのかもしれない。

この本は全作収録しているので発見もあった。動植綵絵30作には昆虫や魚介を描いた作品も含まれているのだが、若冲の描く昆虫や魚介は図鑑の挿絵風で標本みたいで覇気がない。今にも絵を抜け出て暴れまわらんとする迫力の鳥獣の作品に比べると格段に精彩を欠くのである。さらにいえば植物も太い線でワンパターンな印象がある。若冲は鳥にしか萌えなかったトリオタだったことがよくわかる。

動植綵絵は現在は宮内庁が所蔵している。昭和45年に京都御所で全30幅が風通しされ、それを見た外国人の若沖収集家プライスは男泣きに泣いたという話が紹介されていた。縮小印刷でも相当の迫力がある。実物大の動植綵絵に囲まれたら、普通の人間でも絶句して泣いてしまうかもしれないなと思う。

・綺想迷画大全
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005221.html

・怖い絵
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005184.html

・神鳥―イビス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005177.html
モデルは若沖のような気がする小説

・アウトサイダー・アート
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-739.html

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