フォトグラフール
町田康のナンセンス追求系の最新作。笑える。
「嘘が溢れる世の中で唯一信じられるもの」としての写真に、町田が真っ赤な嘘の付帯文章を書く。フォトグラフ+フールでフォトグラフール。首から上がヤギに見える男の呟きだとか、ラクダのぼやき漫才だとか、ネタになる写真からして既に意味不明なのだが、そこから無闇に広がる妄想世界のバリエーションが楽しい。作家町田康が物語を発想する瞬間を見ている気がする。
この本はまえがきから嘘で固められている。これらの写真はどこから持ってきたとか、どういうコンセプトでこの本を書いたとか、説明が一切ない。あとがきにあるかなと思ったがやっぱりない。それぞれ読み切りコラムかとおもいきや、微妙に連作になっていたりする。形式としての完成度は高くない。
町田康の経歴。「1962年大阪府生まれ。作家、歌手、詩人として活躍。96年に発表した処女小説『くっすん大黒』でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞、2000年『きれぎれ』で芥川賞、2001年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、2002年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、2005年『告白』で谷崎潤一郎賞を受賞」。
受賞歴だけ見ていると立派な現代の文豪である。それなのにこんな脱力系の遊びを70回も雑誌で連載して出版してしまうところが、いいよなあと思う。町田康の大作の合間に脱力しながら読むとぴったり。
・土間の四十八滝 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-733.html
・悪人 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-603.html
・告白 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/10/post-474.html
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