土間の四十八滝
昨年、こんな芸能ニュースがあった。
・布袋、町田康さん殴る
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070726-OHT1T00101.htm
「布袋と町田さんは旧知の仲で、布袋の曲の作詞を町田さんが手がけたり、布袋が昨年発売したコラボレーション・アルバムにも町田さんは参加している。趣味でともにバンド活動を行ったりもしているが、音楽活動を巡り双方の意見に食い違いが生まれ、トラブルとなったようだ。」
表現者としてエッジがたちまくる二人は実生活でもちゃんと殴り殴られるような仲なのだなあと感心した。作家として権威のある文学賞を総なめにしている町田康だが、その危険なパンクっぷりは本物なのだなと納得した。
これは第九回萩原朔太郎賞を受賞した詩集だ。中身はポエムというよりむき出しのソウル。それぞれ独白から個性的で強烈なドラマが立ち上がる。印象に強く残った作品の出だしを拾うとこんな感じ。
「あいつにかかったら自分なんかもう犬ですよ あれ買ってこいこれ持ってこいって追いまくられて で もう嫌んなって朝から仕事しないで魯迅ばっかり読んでたんですよ そしたら半田鏝で肉あっちこっち焼かれて折檻って感じで しかもあいつホモだったんですよ」(「俺も小僧」より)
「お車代二万円 これをしねしね遣えば、まあ、悪いけどはっきりいって二週間くらいわたくしは安泰 ところがそんなせこいことをわたくしはせぬ オッソブーコの材料代 それに二万円を全部一気に爽快に遣っちゃったい」(「オッソブーコのおハイソ女郎」より)
「経営会議で如何に叱責されようと俺は重役 常務取締役だ 兼、営業本部長だ へへんだ 羨ましいでしょ」(「その俺は重役」より)
体言止めとオノパトペを多用した独特のリズムの文体。声に出して読むことが前提とされているように感じた。あるいはラップミュージックの歌詞のようでもある。日本語の使い方にはこういうかたちもありえるのかという衝撃を受けた傑作詩集。