知覚の扉

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・知覚の扉
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この本のタイトルから「ドアーズ」という伝説のバンド名が生まれ、その内容は往年のサイケデリックムーブメント、意識革命、ニューエイジ運動の火付け役ともなった。

オルダス・ハクスリー(1894-1963)は、立会人や録音装置を前に、幻覚剤メスカリンを服用して、自らの精神が変容していく様子を記録した。薬が効き始めると、時間や空間の認識が弱まり、代わりに事物の存在度の強さ、意味の深さ、パターン内部の関係性が強く認識されるようになった。そして「すべてが<内なる光>に輝き、無限の意味に満たされている世界」を発見した。

ハクスリーは化学的な力を使って「知覚の扉」を開くことができること、それは芸術家や宗教者たちに創造的インスピレーションを与える超越的なビジョンと同質のものであると語る。「偏在精神(マインド・アット・ラージ)」と「減量バルブ」という二つの概念を使って、人間の内部意識と外部世界の関係を見事にモデル化している。

「人間は誰でもまたどの瞬間においても自分の身に生じたことをすべて記憶することができるし、宇宙のすべてのところで生じることすべてを知覚することができる。脳および神経系の機能は、ほとんどが無益で無関係なこの巨大な量の知識のためにわれわれが圧し潰され混乱を生まないように守ることであり、放っておくとわれわれが時々刻々に近くしたり記憶したりしてしまうものの大部分を閉め出し、僅かな量の、日常的に有効そうなものだけを特別に選び取って残しておくのである。」

見たもの、聞いたものをすべて記録し再生する潜在能力を、ハクスリーは<偏在精神>と呼んだ。これは特別な力ではなく、人間がみな持っている基本能力であるという。

「この<偏在精神>は脳および神経系という減量バルブを通さなければならない。このバルブを通って出てくるものはこの特定の惑星の表面にわれわれが生き残るのに役立つようなほんの一滴の意識なのである。この減量された意識内容に形を与えそれを表現するために、人間は言語と名付けられている表象体系とそれに内在する哲学を創り上げ絶えず磨きをかけてきた、個人はすべて各自がそこへ生まれおちた言語慣習の受益者であると同時に犠牲者である。」

こうした理論のもと、ハクスリーは脳内の化学作用で減量バルブを制御することで、人間は世界に潜在する豊かな意味を、自在に知覚することができる、意識を拡張することができるとした。

超越的ビジョンをみる芸術家や宗教家は、意味にあふれた「素晴らしい原存在」を、脳の減量バルブを迂回するパイプを通して、直接に受け取ることができる人たちなのだ。そのために必要なのは精神修行か薬であるとハクスリーは結論する。

古代人は栄養不足に置かれることが多かったから、現代人よりも変性意識状態に陥りやすく、幻覚を見ることが多かったのではないか、という後半の考察も興味深かった。原始宗教の発生や、宗教の衰退の説明として説得力もあった。

サイケデリックムーブメント、ニューエイジ運動、サイバパンクなどのサブカルチャーの背景にある基本思想を確認したいという動機で読み始めたのだが、全編を通して勉強になるというより、非常に面白かった。この本、決してオカルトではないのである。かなりまっとうな科学であり、哲学であり、総合的な思想の本だったのである。


・すばらしい新世界
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作家ハクスリーの代表作。逆ユートピア小説。

・ジョン・C・リリィ 生涯を語る
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・脳と心に効く薬を創る
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・マインド・ワイド・オープン―自らの脳を覗く
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・科学を捨て、神秘へと向かう理性
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・脳はいかにして"神"を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス
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このページは、daiyaが2008年1月 8日 23:59に書いたブログ記事です。

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