綺想迷画大全

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・綺想迷画大全
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これは傑作。美術館めぐり10館分くらいの価値があった。

古今東西の絵の中から「ヴィジュアル的に面白いもの」を選りすぐってカラーで収録し、その時代背景や技法を解説する。美術的な価値や知名度だけで選ばず、視覚的な面白さに徹底的にこだわって、知る人ぞ知る名画迷画を多く発掘している。印刷も高精細で大きく美しい。ページをめくるたびに目が釘付けになった。見る快楽がたっぷり味わえる。

不思議な構図の絵、視覚的にどきっとする絵、信じられないくらい精密な絵、特異な技法で描かれた絵、不気味な想像の絵など、いろいろなヴィジュアル的面白さがあるのだが、共通するのはどの絵も圧倒的に美しいということ。フルカラーの絵にしばし見惚れてから、著者の博覧強記の解説文を読むのだが、絵のインパクトが大きすぎて解説が頭に入ってこないこともあった。

神々や悪魔、仙人や伝説の怪獣など想像上の世界を描いた絵にユニークな絵が多い。特にキリスト教の宗教画の悪魔は強烈である。「そもそも悪魔とは、絶対神に対立sする観念でありますから、絶対神をいただくキリスト教やイスラム教の文化圏においてこそ、その絵画的表現は多様化したといえるでしょう」と著者はその理由を考察する。たとえばミヒャエル・パッハーの聖ヴォルフガングと悪魔は、典型的な悪魔の絵だ。聖者を誘惑する悪魔の姿がリアルで、夢に出てきそうである。

・ミヒャエル・パッハー 聖ヴォルフガングと悪魔
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西洋画だけでなく、東洋の絵も多数紹介されている。定規で細かな直線を何万本も引いて建築物を描く中国の「界画」はこの本で初めて知った。美術というより設計図に近いらしいが、機会があったら実物をじっくり見て見たいと思った。

歴代の中国皇帝が保有していた名画は、絵の上にベタベタとたくさんの朱色のハンコがおされている。皇帝が鑑賞するたびに「乾隆御覧之宝」などと印を残したからだそうだ。これは画家にとっても名誉なことで作品の価値を高めたのだろうが、西洋美術では考えられない。「後世の人がいかに皇帝とはいえ、勝手に字を書いたりハンコを捺したりすることのできる文化とは、いったいなんであろうか」、東西には「作品空間という観念のちがいがあるように思われるのです」といった著者の考察がある。

日本の絵は少ないが伊藤若冲の南天雄鶏図が選ばれていて納得。


・怖い絵
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005184.html

・美について
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005145.html

・形の美とは何か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005144.html

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このページは、daiyaが2008年1月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

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