ブログ・オブ・ウォー 僕たちのイラク・アフガニスタン戦争
日本のマスメディアにはほとんど登場しない、米軍兵士の生の声が読める同時代の秀作。
「全米「ブログ・アウォード」ベスト・ミリタリー・ブログ賞を3年連続で受賞した人気ブログ「Blackfive」。そのBlackfiveに寄せられた多数のブログから63のエピソードを厳選して収録!戦地の生活、仲間の死、現地民間人との交流……兵士たちは実際に自分が目にしたことや体験したことを、あるいは祖国に待つ家族や恋人たちへの思いを、自らの言葉で語っている。
」
米国のブログにはミルブログ(ミリタリー・ブログ)というジャンルがある。この本はそうしたミルブログのポータル的人気サイトBlackfiveに寄せられた戦争体験記である。
・Blackfive
http://www.blackfive.net/
Blackfiveには写真やYouTube動画と一緒に兵士や家族からの投稿が今も寄せられている。今なら「戦場のメリークリスマス」の報告があがっている。(広告もいっぱい掲載されているのはアメリカらしい気がする。)
数年前に映画「ブラックホークダウン」を見たときと同じ衝撃を受けた。1993年10月3日の米軍によるソマリア侵攻の失敗を描いた戦争映画だが、現代の本物の戦争(白兵戦)が描かれていた。いくら近代兵器と豊富な物資で武装していても、決死のゲリラ戦に出てくる敵兵とやりあうのは命がけだった。生々しいブログレポートから、イラク・アフガニスタンでも、前線の兵士たちは死と隣り合わせの日々を送っていることがわかる。
多くの兵士ブロガーたちは愛国心に燃えている。国のため、家族のためという大義のために戦っている。そう思わないと過酷な軍隊生活を生きていけないからであろうが、軍隊生活や戦闘行為をあからさまに美化している兵士も結構多いのである。このレポート集はアメリカの愛国主義のヤバさの見本市でもある。
ところで、兵士たちがこんなに戦争の日常をブログに書いてしまって大丈夫なの?秘密漏えいとかはないの?と思ったら、ちゃんと後書きに、最近の軍の情報統制の実施が書かれていた。現在の米軍ではここまで自由な発言は許されていないそうだ。この本は兵士たちが本音を語ることができた最後の時期の、貴重な記録なのである。