閉鎖病棟
最近、過去の傑作小説の発掘に凝っている。これは10年前発表の作品。「閉鎖病棟」とは重い症状の精神病患者のための病棟のこと。
「とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちは―。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作」
殺人や自殺未遂など、暗い過去を持つ登場人物たちが、閉鎖された空間の中で展開する人間再生ドラマ。心を病むに至った患者たちの苦悩の半生はそれぞれ印象深い物語であり、登場人物たちのキャラクターに感情移入しやすくなる。そして静かな病院生活の中で起きた小さな波紋が、次第に緊張感を高めて、大きなカタストロフへ向かっていく。
精神病院を舞台にしたドラマというと映画「カッコウの巣の上で」を思い出した。
・カッコーの巣の上で
「刑務所の強制労働から逃れるために精神疾患を装って精神病院に入所させられた男の巻き起こす騒動と悲劇を描いた、ケン・キージーのベストセラーを映画化した作品。 」
この映画も最高だったが、カッコウが動だとすれば、閉鎖病棟は静の物語として素晴らしい。なおテイストが似ているので東野圭吾の「手紙」が好きな人に特にお勧め。