『針聞書』 虫の知らせ
へんな本だ。
九州国立博物館所蔵の「針聞書」は、織田信長の時代の1568年10月11日に、現在の大阪在住の二介という人が書いた鍼術の秘伝書である。人間の体内にすむとされる、想像上の63種類の虫の絵とその説明が書かれている。
たとえば一匹目は肺積という白っぽくて辛い味と生臭いにおいを好む虫。最初は右のわき腹に発生して、やがて胸先を多い尽くして肺病を引き起こす。治療に当たっては、鍼はやわらかく浅く立てよという指示がある。
日本語には虫という語のつく表現が多い。蓼食う虫も好き好き、若い娘に悪い虫がついて、虫がいい話、虫の知らせ。悪い虫が起きて、腹の虫がおさまらない、虫が好かない、本の虫、仕事の虫などたくさんある。多くの表現の背景には、人間の体内に虫がいて宿主の心身に影響を及ぼしているという民間信仰がある。昔は排泄物に回虫が多く見られたから、体内の虫は身近でリアルな存在だったのである。
63種類の病魔の虫は、現代のウィルスや細菌に相当する存在である。今でも子供向けの説明には、虫歯菌や風邪のウィルスが擬人化されて登場するが、この古文書に登場する虫たちは馬や蛇のような形をしていたり、独特の性格を持っていたりと、味のあるキャラばかり。
・九州博物館のサイト
http://www.kyuhaku.com/pr/collection/collection_info01_02.html
上記のサイトで実物が公開されているが、ヘタウマ系のキャラクターとして愛嬌があるものが多い。博物館はプロモーションにこの虫たちを活用しているようだ。フィギュアまで制作されて販売されている。戦国時代の精神世界から登場したこのキャラクター、結構、流行るかもしれない?
・フィギュアの販売サイト
http://www.j-cast.com/feature/mushi/fig.html