神鳥―イビス
「夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。死の直前に描かれたこの幻想画の、妖しい魅力に魅せられた女性イラストレーターとバイオレンス作家の男女コンビ。画に隠された謎を探りだそうと珠枝の足跡を追って佐渡から奥多摩へ。そして、ふたりが山中で遭遇したのは時空を超えた異形の恐怖世界だった。異色のホラー長編小説。」
直木賞作家 篠田 節子の93年の作品。
登場人物のキャラクターが俗っぽいため、シリアスな民俗ホラーには向かないんじゃないかと思いきや、後半の臨場感は半端ではなくて、コミカル要素はほどよい中和剤として作用している。ホラーとして傑作である。
呪われた日本画をめぐる怪奇がテーマだ。強烈な映像を見ると焼き付いてしまい、しつこくイメージが記憶から立ちあがってくるという体験はだれしもあるのではないか。視覚を通して何かに取り憑かれる、見たものに捉われて狂っていく恐怖はそんな普通の体験の延長線上にあるように思えてリアリティを感じた。
ところで「神鳥」と書いて「イビス」と読ませる根拠を調べていたら、もともとはイビスは太陽神を導く朱鷺の頭をしたエジプトの神だということがわかった。朱鷺というと絶滅寸前の保護動物という印象があるが、実物の写真を見てみると、何を考えているのかわからない顔がかなり怖いことに気がついた。
Wikipediaより画像引用