カフカ短篇集

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・カフカ短篇集
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カフカの「掟の門」は、ほんの数ページの作品なのに、強烈に印象に残り、何度も反芻しながら、意味を考えさせられる。読書会でも開いたら何時間でも討論できそうである。

「掟の門」。男がいる。彼は「掟の門」の前で、大男の番人に阻まれ入ることができずにいる。「いまはだめだ」と言われ続けて、男は長い年月、門番が入ることを許してくれるのを待ち続けた。そして年をとって命が尽きはてようとしている。

「「この永い年月のあいだ、どうして私以外の誰ひとり、中に入れてくれといって来なかったのです?」いのちの火が消えかけていた。うすれていく意識を呼びもどすかのように門番がどなった。「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえひとりのためのものだった。さあ、もうおれは行く。ここを閉めるぞ」」

そこから人生の教訓のような普遍的なものを読み取ることができるし、カフカの時代の社会や政治背景と紐づけて何かを読むこともできる。フロイト流の精神分析論を展開することもできる。カフカは生前にほとんどの作品を公開することなく逝った作家なので、何が著者の意図だったのかは確定できない。この多義性と不確定性がカフカの不条理の面白さなのだなあと改めて思った。

この短編集の収録作品では「掟の門」「橋」がおそらく一般的な人気作品だと思うが、私が一番好きなのは「こま」だ。たった2ページ、1シーンだけの超短編だ。ある哲学者が子供たちの回すこまをじっとみている。回っているこまをつかもうとする。

「つまり彼は信じていたのだ。たとえば、回転しているこまのようなささやかなものを認識すれば、大いなるものを認識したのと同じである。彼は大問題とはかかわらなかった。不経済に思えたからである。ほんのちょっとしたささやかなものでも、それを確実に認識すれば、すべてを認識したにひとしい。」

ここを読んでいて、電車をひと駅乗り過ごしてしまった。

超短編が多いので、移動や休み時間に読みやすい。

「火夫」は珍しくドラマチックな展開をする。「万里の長城」は政治や経営の哲学考察として読める。

【収録作品】

掟の門
判決
田舎医者
雑種
流刑地にて
父の気がかり
狩人グラフス
火夫

バケツの騎士
夜に
中年のひとり者ブルームフェルト
こま

町の紋章
禿鷹
人魚の沈黙
プロメテウス
喩えについて
万里の長城

このブログ記事について

このページは、daiyaが2007年11月 1日 23:59に書いたブログ記事です。

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