闘う物理学者 天才たちの華麗なる喧嘩
歴史上の偉大な物理学者をめぐるで喧嘩や論争に焦点を当てて、現代物理学の歴史の一面を面白く、わかりやすく描いた一般向けの科学読み物。取りあげられたのは以下の大物物理学者(ではないのもあるが...)。
・ファインマン VS ゲルマン
・ガリレオ VS ローマ法王
・アインシュタイン VS ボーア
・ノーベル賞 VS フランクリンメダル
・ボーム VS アメリカ「帝国」
・ランダウ VS スターリン
・マリー・キュリー VS 差別
・湯川秀樹 VS 朝永振一郎
・ホーキング VS ペンローズ
意外な事実の紹介で読者に関心を持たせていく。
たとえば350年にわたったガリレオとバチカンの戦いの章はあれ?と思った。史料をちゃんと調べるとガリレオは、そういったと言われる有名なセリフ「それでも地球は周っている」などとは言っていないそうなのである。
「ガリレオ裁判は、通常流布されているような「科学と宗教の争い」という次元の話ではなく、老練な政治家(ローマ法王)が自分の保身のために親友であったガリレオを生贄にしたという次元の話なのである。意外と単純な話だったのである。だから本当は、後世に語り継がれるほどの大事件ではないのだ。」
ガリレオは法王とツーカーだったらしく、現実は内輪揉めに近い状況だったという。科学のために戦った孤高のガリレオのイメージが崩されて、政争に敗れたエリート科学者という実態が明かされている。
こうした天才たちの現実の姿を伝えるエピソードを紹介しながら、天動説と地動説、相対性理論と量子論、実在論と実証論など、当時彼らが対立した論点を、わかりやすく解説してくれる。どれも上質なエッセイで科学への興味をかきたててくれる良書だと思う。
それにしても天才科学者たちには極端でこどもっぽい振る舞いが目立つ。天才であるが故に、横暴も奇行も仕方がないとして許されたということなのだろう。また、こどもの純粋さ、飽くなき好奇心、無謀な行動力などがあったからこそ、天才だったのだろうなあとも思える。
周囲が「天才だからしょうがない」と大目に見ること=本人の能力といえるのかもしれない。だとしたら、奇行の量で科学者たちの行動を測れば、次の大天才を発見できるのかもしれないと思ったりした。
・タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005061.html
・ビッグバンの父の真実
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004784.html
・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002797.html
・はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004230.html
・ホーキング、宇宙のすべてを語る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004047.html
・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html
・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html