SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?
ソーシャルネットワークの研究本。
佐々木 俊尚 (著), 原田 和英 (著), 保田 隆明 (著), 齊藤 和生 (著), 田口 和裕 (著), 平山亜佐子 (著), 「シナトラ千代子」管理人 (著), 松永 英明 (著), 園田 道夫 (著), 寺本 秀雄 (著), SE編集部 (編集) とたくさんのライターが参加して執筆している。
一般論として、執筆者多数で書いたIT本というのは、文章の寄せ集めになりがちで、面白くないものが多いのだが、この本は、違った。寄せ集め本ではあるのだが、それによって、妙なインパクトが出ている。
前半と後半でまるっきり違う本だとも言えそうなのだが。
前半の目次はこんな感じで
「Part 1:SNSはどこへ向かうか
・ソーシャルネットワーキングはネットとリアルの関係を変えていく/佐々木俊尚
・Singing new songs「新しい歌」/寺本秀雄
Part 2:ソーシャルメディアの可能性
・世界のSNSは多彩で充実している/原田和英
・意外とクチコミに向かないSNSで上手くマーケティングする方法/保田隆明
・モバゲータウンのDNA リアルとヴァーチャルを揺れ動くケータイSNSの世界/畑村匡章(株式会社ディー・エヌ・エー)
・Twitter・Vox・Tumblr・コトノハ ミクシィに疲れたアナタにおすすめ ユル~いソーシャルメディアたち/齊藤和生
・Singing new songs「ビヨンド・ザ・タイム」/寺本秀雄」
前半は、ジャーナリスティックに、データに基づいて、真面目なSNS研究の内容が多かった。評論家たちがSNSの世界の見取り図を客観的に描いてくれている。普通に役立つ情報である。
ところが、後半でライター達が暴走する。
「Part 3:素晴らしき「マイミク」の世界
・極私的mixiクロニクル 僕と誰かとミクシィで/田口和裕
・古屋兎丸さんが二十年前の記憶を漫画に昇華させるためにソーシャルネットワーキングがどんな役割を果たしたのか? またはサブカル部部室としてのmixi
・コミュニティ管理人は指四本で殺れる/平山亜佐子
・ミクシィ疲れの傾向とその対策 SNSはルールのない荒野だった/「シナトラ千代子」管理人
・Singing new songs「アイネ・クライネ・ナハトミクシィ」/寺本秀雄
Part 4:本当は危険なSNS
・コミュニティ乗っ取り事件 SNS=性善性な巨大社会における異文化衝突の顛末/松永英明
・ミクシィの危うさ SNSは個人情報の宝の山だ/園田道夫
・Singing new songs「妖怪スパムメエラ」/寺本秀雄
」
もうタイトルからして大暴走である。日経BPの編集者だったら止めただろうが、止めないのが翔泳社の良いところ。私が高く評価するのは当然、圧倒的に後半である。サブカルチャーとしてのSNSの良い面も悪い面も、高いところにいる評論家としてではなく、どっぷり中の人になったライター達が、現状を語る。
前半は一般人向け、後半はマニア向けで両方を楽しめるお得な一冊になっているなあと思う。