Eugene Atget (Masters of Photography Series)
・Eugene Atget (Masters of Photography Series)
Eugene Atget(ウジェーヌ・アジェ 1857−1927)の代表的作品を集めた写真集。洋書。このAperture masters of photographyシリーズは写真史を学ぶ人向けに作られているので、安価でありながら、装丁もプリントの質もよくて好きである。
アジェのパリの写真はストレートなものが多い。街角の建築を広角レンズを使って、遠近感たっぷりにとらえている。画面の中央にすっと入っていくような奥行きのある画面が好きらしい。ページをめくっているとアジェらしい構図に次第に目が慣れて、こう撮るしかないだろうという、迷いのない構図に見えてくる。
解説を読んだところ、アジェは芸術としてというより、主に博物館におさめる記録として、パリの街の写真を撮影していたことがわかった。当時、写真は、画家たちが絵を描くための素材としての需要もあったらしい。経済的に恵まれていなかったアジェにとって、写真は生計を立てるための手段でもあった。
「アジェする」。カメラの本や雑誌などにときどき登場する言葉だ。アラーキーも使っている。記録写真でありながら、名前が動詞活用されてしまうくらいの、強い独創性が感じられるのが、アジェなのだ。
アジェは街の中の人を撮った写真にも名作が多い。たとえばこの「オルガン弾きとストリートシンガー」。当時の撮影は大判カメラで長時間露光が必要だったはずで、すべて演出の、やらせ写真だと思われるが、記録であると同時に写真であるアジェらしさが出ている。
#ウィキペディアより画像を引用。
アジェらしさってなんだろうかと考えてみるに、街の写真については、
・建築を真正面から全体像でとらえる
・奥行き、遠近感をだすような構図をねらう
・雲、壁に落ちる木々の影など、明暗要素を多く取り入れる
・池など水がある場合は、写りこみのシンメトリーを活用する
・広角レンズで周辺がケラれた写真が結構多い
などであろうか。
どれも凝った構図ではないので、素人でも”アジェ風”に撮るのは簡単なのだが、本物はやはり質感も風格も凄いものだなと、大きなプリントを眺めながら味わえる一冊である。