36フォトグラファーズ―木村伊兵衛写真賞の30年
「日本の写真界をリードしてきた「木村伊兵衛写真賞」の30年の軌跡。最新受賞者を含む、受賞作家36名の作品集。第1~30回の受賞者の略歴と、第30回の受賞者・候補者・選考委員一覧も収録」。
大型本。カラー。
この三十年間に、第一線で活躍した日本のフォトグラファーの作品が一冊にまとめられている。新しい年度順で並んでいるが、年を追うごとに、一目でわかりやすい作品が選ばれるようになってきたのだな、ポップアート化しているなあと感じる。
第6回受賞の「花嫁のアメリカ」は地味なポートレートという絵柄だが、深みがあった。そこに写る人間の表情や肌の皺に、長い物語を感じる。
「「戦争花嫁」のその後を追い続けた感動のフォト・ドキュメント!!太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争―敗戦と戦争のもとで契りを結び、母国を離れた「戦争花嫁」と呼ばれた女性たち。言葉の壁、人種の偏見、花嫁たちは異境での人生をどう歩んだのか。反響を呼んだ1978年の『花嫁のアメリカ』から20年、花嫁たちが描いた「歳月の風景」は、人種、家族、愛と喜び、別離や死―人間の生の本質を語りかける。 」
巻末には、篠山紀信、土田ヒロミ、都築響一、藤原新也の豪華な対談も収録されている。この中で、写真家の形式とスタイルについてのディスカッションがあって、
「土田 写真というのは、方法論的には機械を使うわけですよ。8×10、4×5、6×6、いろんなものが多くあって、カメラを選択することで文体を変えられるんですよ。これが写真の表現のすごいところだと僕は思っているんですね。絵画だったり、言葉の人というのは、そんなに変えられないですよ。
藤原 例えばHIROMIXさんというとコンパクト。蜷川さんはフィルムの選びすら全部決まっちゃっている。アグファの何って、若くして文体を決めている。川内倫子さんは上から覗くローライで、四角で撮る。佐内正史さんは6×7のアサヒペンで自分で焼くとか、ハードを変えない。それが文体につながる。」
というやりとりがあった。プロの世界もとっくにデジタルカメラの時代なのに、なかなかデジカメ写真家がこうした賞を受賞しないのは、明らかな文体感のあるカメラが少ないということなのかもしれない。
第32回(2006年度) の木村伊兵衛賞はこの二人だった。どちらも大変わかりやすいから、写真集もよく売れそう。
・第32回木村伊兵衛写真賞受賞者発表
http://opendoors.asahi.com/camera/kimuraihei_32nd/index.shtml
どこにでもある日常の中に、不思議な、微妙なシャッターチャンスを次々にとらえていく天才。目の付けどころが常人と違う。街角スナップが多いという点では木村伊兵衛と共通するが、うめかよは、粋というより笑を追求しているような気がする。
大判カメラのアオリを使った箱庭風写真。すべてが作りもののミニチュアのように見える。
・【写真展リアルタイムレポート】本城直季「small planet」、「クリテリオム67」
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib/2006/04/21/3674.html
・都市のウソっぽさを表現したい
http://www.tokyo-source.com/japanese/archives/2005/09/012.html#5
・木村伊兵衛の眼―スナップショットはこう撮れ!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004923.html