宇宙のランデヴー
この作品の発表は1973年で、私が和訳を文庫で読んだのはもう20年前になる。当時は読み終わったあとしばらく絶句してしまうような衝撃的な体験だったことを覚えている。そしてこの本がきっかけでSF小説を読むようになった。私にとって特別な本である。
この正月にはじめて読み返してみた。20年はこどもが生まれて成人する時間だから、結末を含めて物語の筋は忘れていた。だから、今回もまた感動してしまった。次は60歳になったら読み返そうと思う。
2130年、太陽系に直径40キロの円筒状の人工物が接近する。近くを航行する軍の宇宙船にその正体を調べる指令がくだされる。この人工物体は宇宙を100万年間もの長旅をした末に、太陽系を通過するのである。古代の神の名をとってそれはラーマと名づけられた。ラーマから人類には何のメッセージも送られてはこない。
ノートン中佐ら探査メンバーはラーマにドッキングして、未知の内部空間へと侵入していく。ラーマの軌道が太陽系を離脱するまでに残された時間はわずかである。ラーマとはいったい何なのか?、知的生命との遭遇はあるのか?、ラーマの太陽系接近の目的は?。ラーマが次々に見せる驚異は隊員たちの理解を遥かに超えて謎は一層深まっていく。
映画の原作「2001年宇宙の旅」が特に有名なアーサー・C・クラークだが、私はこの作品が一番好きだ。最高傑作だと思う。人間ドラマが描けていないという批判もあるようだが、ラーマを主役に宇宙の神秘が見事に描かれている。この作品では人間は物語の道具に過ぎないのだと思う。それでいいのだ。
「これは何なのだ」「いったいどうなってしまうんだ?」という読み手の好奇心をクラークは、ラーマの神秘を少しずつ開示することによって刺激し続ける。センス・オブ・ワンダー全開の物語。
人類が月面着陸を果たしたのは1969年である。1973年の段階で宇宙に対してここまでの想像力を発揮していた著者の頭脳も驚異である。ヒューゴー賞/ネビュラ賞ほか多数を受賞した古典。80年代になってから続編(2,3,4)も発表されている。今年の正月に再読の勢いで4まで2700ページ超を全部読んだので、近日、続編も書評をアップしたい。
The Arthur c. Clarke Foundation
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