The Photography Bookとエリオット・アーウィット
古今東西500人の有名写真家の写真を、1枚ずつ500枚集めた写真集。一作に写真家を代表させるというのは難しいと思うのだが、ピンとくる一枚と出会えたら深追いしていくきっかけになる。写真芸術の世界の見通しを作るのによさそうな大判サイズの本。洋書。
それぞれの作品には英語で数行の解説がつけられている。作品を見て解説を読むと1枚当たり、2,3分かかるので、写真集とはいえ読み通すのにはかなりの時間がかかる。毎晩、寝る前に少しずつ味わいながら見ていった。好きな作品に付箋を貼ったら20枚にもなった。
・気になった写真家リスト
Allard William Albert
Burri Rene
Carroll Lewis
Dijkstra Rineke
Erwitt Elliot
Evans Frederick H
Ghirri Luigi
Goldblatt David
Goldin Nan
Gowin Emmet
Groover Jan
Gursky Andreas
Hockney David
Hofer Candida
Knight Nick
Krims Les
Levy & Sons
Lichfield Patrick
McCurry Steve
Parkinson Norman
500人の写真家の個人的なベストを一人挙げるとしたら、エリオット・アーウィットである。ウィットとユーモアに富んだ決定的瞬間を撮り続けている。作品は白黒ばかりだが、強烈な個性があって、アーウィットの作品であることが一目瞭然といっていい。私が利き酒ならぬ利き写真で、かなりの確率で作家を言い当てられる数少ない写真家だ。
私がアーウィットの作品を初めて見たのは、学生時代に聴いたフェアグラウンド・アトラクションというバンドの、アルバム 「The First Kiss of Million kisses」のジャケットだった。バックミラーの中で男女がキスしている印象的な一枚。音楽と同じくらいこの写真が気に入って衝動買いした。それがアーウィットの作品の一部を切り取ったものだと知ったのは数年前のこと。
代表作。
エリオット・アーウィットの作品はポートレートでも風景でもない。彼の被写体は物語であり、まさに「情景」という言葉がふさわしい。見るものの感情を動かすドラマチックな場面の連続なのである。
アーウィットの撮影技法について詳しくないが、おそらく一部または多くが作為の演出で作った写真なのではないかと思われる。偶然にスナップしたにしては道具立てや構図が整いすぎている。しかし、その作為は高度に洗練されており、映画のワンシーン以上に背景を物語ってくる。長々と見惚れてしまう。
なお、5月6日まで銀座のシャネル ネクサスホールでエリオット・アーウィットの代表作の無料展覧会が開催されている。ここでは無料でパンフレットと呼ぶにはもったいないくらいの立派な、多数の写真入り冊子が配布されている。この冊子なら1000円でも払うのだが、タダで配るシャネルはえらいえらい、よくやった。
・エリオット・アーウィット写真展
http://www.chanel-ginza.com/nexushall/elliott/
また恵比寿の写真美術館でも5月まで、世界最強の写真家集団マグナム・フォトスの東京写真展が開かれている。エリオット・アーウィットもマグナムの一員であり、こちらでも傑作が展示されていた。どちらもおすすめである。
・”TOKYO” マグナムが撮った東京
http://www.syabi.com/details/magnam.html