裁判官の爆笑お言葉集
裁判の傍聴をライフワークにする著者が書いた、本当にあった裁判官のお言葉と解説。裁判官という、真面目で仏頂面のイメージが崩れ去っていく。面白い。
たとえば有名な話では、「この前から聞いてると、あなた切迫感ないんですよ」と姉歯被告は裁判官に怒られた。
裁判には、裁判官が説諭、付言、所感、傍論などの個人的見解を述べる部分があり、そこに人間性あふれる名言、迷言、失言、暴言が飛び出すことがある。著者はたくさんの裁判を傍聴し、そうした発言ばかりを収集して、文脈つきで紹介している。
「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい。」
「二人して、どこを探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰をすえて真剣に話し合うよう、離婚の請求を棄却する次第である。」
「暴力団にとっては、石ころを投げたぐらいのことかもしれませんが、人の家に銃弾を撃ち込むと相当、罪が重くなるわけです。」
「変態を通り越して、ど変態だ。」
など、裁判官らしからぬ私的な感情が混じった「お言葉」がある。
データとして、面白いお言葉を連発する裁判官の名前も記載があるので、裁判ウォッチャーの参考にもなる。
そういえば、ホリエモンの裁判について、面白いニュース記事を思い出した。
http://www.asahi.com/special/060116/TKY200703160146.html
『
小坂裁判長は判決理由読み上げ後、堀江前社長に向かい、東京地裁に送られてき
た、ハンディキャップのある子どもを持つ母親からの手紙を紹介し始めた。
「大きな夢を持ち、会社を起こし、上場企業までにした被告に対し、あこがれに似
た感情を抱いて働く力をもらった。ためたお金でライブドア株を購入して今でも持ち
続けている」。手紙にはそう書かれていたという。
小坂裁判長は「被告のこれまですべての生き方を否定されたわけではない。この子
のように勇気づけられた多くの人がいる。罪を償い、その能力を生かし、再出発を期
待している」と諭した。堀江前社長はそれを聞きながら、何度も深くうなずいてい
た。
』
これなどは、思いつきの行動ではなくて、あらかじめ手紙を準備した演出である。これで本当にホリエモンに対して説諭効果があるのか、裁判官がやりたかっただけなんとちがうか、とか思うわけだが、それがこうして報道されると、ニュースのドラマ性が高まって、注目が集まるのは確かだ。
この本を読んで、裁判って一度も傍聴したことがないのだが、一度、見てみたくなった。