地球のすばらしい樹木たち―巨樹・奇樹・神木
仕事から帰って深夜にひとりでぼおっと見ている本。
英国の貴族で歴史学者トマス パケナム伯爵は1998年に、英国中を旅して巨樹・奇樹・神木を見てまわり、精選したベスト60本の樹木の写真集「Meetings with Remarkable Trees」を出版して絶賛された。これは、その著者が2002年についに世界のベスト60本を選んだ「Remarkable Trees of the World」の日本語版である。大判サイズで重たい、いかにも巨木の本らしい装丁だ。
収録されているのは、どの樹木も味わいぶかい名木である。一本一本が独自のオーラを放っており、特別な樹であることが一目瞭然である。静かに見入っていると風に揺れる木々ざわめきや、朝靄のさわやかさ、太陽のにおいがページの向こうから伝わってくる。
100メートル以上、樹齢何千年、将軍という名の、レッドウッドの巨木に圧倒され、異界に迷い込んだかのような幻想的なバオバブの林に目を奪われる。日本の木も3本ある。日本の老樹は神木である。
写真集だが解説の読み物部分が充実している。それぞれの樹木に伝わる伝説や撮影時のエピソードが見開きの半分を占める。本のサイズが十分に大きいので、片面に解説、片面に写真のレイアウトは正解だと思う。見開き全部を写真に使ってしまうと、中央の綴じ部分が見にくくなってしまうから。最初に写真を心ゆくまで味わい、記事を読んでから、また写真を味わう。じっくりと読みながら長時間、鑑賞できる構成が秀逸。
ここに選ばれたものは老木が多いのだが、半分枯れた樹よりも、力強く生きている樹が魅力があるように思う。樹木が輝くには単体ではだめで、周囲の環境も大切な要素だと知った。中くらいのサイズの樹木に取り囲まれる中で、際立って大きく美しい樹木こそ神々しくみえるものだ。
日本の樹木も神々しさでは上位にあると感じる。屋久島はいつか訪れてみたいと思った。
異彩を放つのは何本も収録されているアフリカのバオバブの樹。著者はバオバブの樹木で別に写真集を出版しているが、この本においても、大きなバオバブの素晴らしさは特筆すべきものがあった。それが立ち並ぶ様は幻想的、人類の原風景といえるものかもしれない。
世界中の選りすぐりの樹木をいつでも大判の写真で鑑賞できる。飽きずに長く楽しめる素晴らしい写真集である。
・WELCOME TO THE TULLYNALLY CASTLE AND GARDENS HOMEPAGE
http://www.tullynallycastle.com/
伯爵である著者の城。
本当に素晴らしい写真集読み物。
大也 さま
巨木の紹介、ありがとうございました。
小生、35年前、屋久島を訪れた際、屋久杉の巨木に圧倒されたのを、まざまざと思い出しました。
巨木信仰と言うほどではありませんが、千年も、三千年もいきていた木には、どんな樹種であれ、なんとなく尊崇に近い感情を覚えますから、不思議です。