2週間で小説を書く!
文芸評論家が教える小説の書き方。
「自分が何かひとかどの、個性的な人間のつもりで得意になって語っているような小説なんか、誰も読みたくない。お前のことなんか、べつに知りたくないんだよ、と言ってやりたくなる。そういう冷たい目を向ける厳しい読者、というより何の関わりも興味もない読者の他人をも引きつけるような力を魅力というのである。」
そういう魅力のある文章を書くためのトレーニング方法が2週間分、この本に紹介されている。たとえば複数人数でリレー小説を書く、とか、最初の記憶を書く、人称を変えて書く、など。古今東西の名文を例にしての分析が参考になる。
小説は書いてみたいと思っている。たまに少し書いてみるが完成したためしがない。場面の描写はできるのだが、物語が作れない。物語を先に作ろうとして、思いついた筋を書き出してみると、ありきたりの筋になってしまって、書く気が失せてしまう。「大切なのは解決ではなく変化である」という。オチをつける必要は必ずしも無いわけだ。
いろいろな作家の登場人物設定や命名法なども紹介されている。リアルさを出すために実在の人物をモデルにしたからといって小説としてのリアリティがあるとは限らない。むしろ、ほとんどの人間は凡庸なので、モデルベースで書くとどこにでもいる人間になってしまう。「小指のない女の子」なんて登場人物をつくるのもいいとアドバイスがある。
「セリフのあとに「・・・・・・・と○○は言った。」と断りを入れなくても、このセリフをしゃべっているのは間違いなくあの人物だと分かるような個性をセリフで体現すること。」」。そう、自然なセリフって難しい。女性の登場人物の語尾なんて意識して書くと、本当の現代女性が喋る言葉遣いではなくなってしまう。意識して日頃から人の会話を観察せよという。
この著者は作家ではなく評論家なので、批評家の目で冷静に作家の文体を分析している。小説家の実態についての説明がとても面白かった。有名作家は一握りで、文学賞を取っても文筆では食えない小説家がいっぱいいることや、小説家以外の正業につけないタイプが作家になっていることが多いことなど、現実についても教えてくれる。
最も強調されているのはとにかく作品を完成させよということ。この本のメソッドで書けるようになるかはわからないが、書いてみようという気を起こさせる本であることは確かである。
・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html